パルデンの会

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現在の中国への日本の経済界あるいは世界経済の関係は誤り


不正と汚職から成り立っている中国経済を中心に考える様に仕向けるマスコミ、評論家に注意


【第245回】 2011年1月31日 陳言

米国ばかりか欧州でも大型商談をまとめた中国
一方かくも疎遠になった日中関係の原因を探る

2011年、新年早々中国の指導者は、相次いで外国を訪問した。
1月18日から21日まで、胡錦涛国家主席アメリカを正式に訪問した。その前の1月4日から12日まで、国務院・李克強副首相はスペイン、ドイツ、イギリスを訪問した。

胡錦涛主席が訪米して、450億ドルにのぼる大型の商談をまとめたことについては、日本でも大きく報道されたが、李副首相が訪欧して、スペインでは70億ドル、ドイツでは62.5億ドル、さらにイギリスでは47億ドルの商談をまとめ、合わせて約180億ドルの商談を成立させたことについては、あまり報道されていない。

さらに2010年11月、胡錦涛主席がフランス訪問の際には、200億ドルの商談をまとめていた。中国はヨーロッパ諸国やその他の国の国債も緊急に購入しおり、欧米とはそれぞれ400億ドル以上の商談を、この数ヵ月でまとめ上げたのである。これに対して、日本との間ではそういう話が聞こえてこないのはなぜだろうか。(北京在住ジャーナリスト 陳言)

開放路線を最も支援してきた日本が
成果を刈り入れできない不条理

 振り返ってみると、昨年9月の漁船衝突事件によって、日中関係は戦後もっとも厳しい時期に入ってしまった。約8割の日本人は中国のことをあまり快く思っていない。一方、中国では情報制限などもあって、漁船衝突、日本国民の反応などの報道はあまり行われていないものの、日本のことを気持ちよく思っている人は5割にも達しない。

 中国が改革開放を実施した結果、ちょうどGDP規模が世界先頭集団に入ってきた時期に、日中関係がきしんだ。「30年前から改革開放政策を実施する中国に、最も資金、技術で支援してくれた国は日本で、今はその収穫の時期に来たが、欧米、韓国が成果を刈り入れている。なんと不条理なことだろう」と、ある中国の日本専門家は嘆く。

 台湾への武器売却、チベット独立を支援するような行動、イデオロギーでの鋭い対立などから見て、欧米と中国との間は、中国の言う「核心的な利益」と直接にぶつかっているにもかかわらず、政経分離の原則は貫いている。しかし、日本と中国との間では、そのような分離原則が機能しているとは言いにくい。

 これから安定成長していく中国では、多くの国家プロジェクトが推進されていく。外国企業にとって、自社の努力だけで参入できるプロジェクトは少なく、どうしても国のバックアップが必要となる。民主党政権が中国に「ものを言う」こと自体は非常に立派だが、同時に収穫のタイミングを間違ってはいけないことも、また心すべきではないか。

 なぜ日本は欧米と、これほどにも違うのだろうか。それは中国を熟知している政治家、経営者や学者の不在、情報発信力の弱さ、中国との話し合いチャネルの不足に由来しているのではないか。このままでは、日中関係がますます疎遠になっていくことさえ危惧される。

層が薄くなってしまった
日本の各界の中国専門家

 「高崎達之助(1885~1964年)、岡崎嘉平太(1897~1989年)、斎藤英四郎(1911~2002年)、橋本龍太郎(1937~2006年)などの日本人は、中国ではたいへん有名だった。現在そのような方はまったくいないわけではないが、お名前を挙げると、その方たちにとっては迷惑だろう」

 日本へ取材に出かける前に、だれに聞けば、中国の事情を理解したうえで日本について説明してもらえるか、と中国社会科学院のある研究者に質問すると、彼はこう答えた。
「橋本さん以降は、もういないのかとも思われます」

 数年前に、ある政治家が日本の中国友好団体のトップに就任した際、北京支局特派員を長く務めた日本人記者にもらったコメントが思い出された。「彼(橋本氏)は晩節を汚した」と、その元特派員ははっきりと言った。日中関係がこれほど厳しくなったなかで、政治家は身を挺して時流を変えなければならないが、マスコミの人は、中国との関係が悪化しても、日本にとってはそれほど不利益ではないと見ていたのだろう。

「中国にパイプを持っている」ことは、ある意味で“汚い”というイメージが日本にはあるのではないか。とくに中国を報道する記者たちは、そのようなイメージを一番強く感じていたのではないだろうか。

 政治家もそのあたりは敏感だった。数年前に日中友好議員連盟のある代議士を取材した。「中国は、政府開発援助(ODA)から卒業する時期に来ている」と、その先生はスバリ言った。当時、相が靖国神社を参拝し、中国が猛反発していた。突然のODA卒業論は、その靖国参拝反対に対する対抗措置のようにも聞こえた。

 卒業させようと考えることは日本の自由だが、日中友好議員連盟のメンバーからそのような話を聞いて、さすがにびっくりした。当時中国の1人当たりのGDPはまだ1000ドルにも行かず、日本のODA基準である1500ドルには遠く届かなかった。日中友好活動に携わっている代議士が大変厳しいことを言う背景には、中国とは一線を画したいという思惑も感じられた。

 かつては日本に行って企業トップを取材すれば、中国サイドのデスクは、すぐ目立つ紙面を提供してくれた。今は日本企業のトップに中国でよく知られている人がそう多くないこともあって、記事としての扱いも地味になった。また企業の経営者も簡単には取材できなくなっている。

 日本のいくつかの大学の教授の、日本やアジアに関する研究成果などは、かつて中国に強い影響を与えた。しかし、今はビザなしでいつでも中国に出かけて、学術交流などができるにもかかわらず、そのような影響力はかえって薄くなった。中国を専門とする教授、研究者は、昨年来のこのような日中関係の変化に対して、はたして十分な説明をなしえたのだろうかと思う。

 現在の日本の、政治、経済、学術研究などほぼすべての分野で、中国を専門とする人材は、どのぐらいの層の厚さがあるのだろうか。とくに戦後の日本と比べると、今日は相当薄くなり、日中関係の疎遠はそこから来ていると思われる。

グローバリゼーションに立ち遅れた
日本マスコミの情報発信

 激変している日中関係を見る場合、日本から中国への情報発信の不足は特に目立つ。

 中国のポータルサイトを見ていると、時々、フィナンシャル・タイムズ(FT)、ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)、フォーブス、フォーチュンなどの中国語サイトから転載されたものに出合う。ミニブログで最も積極的に発信しているのは、欧米メディアのサイトだ。中には自社の中国語サイトの最新情報について、タイトルやリンクが張ってあるものもある。

 日本のマスコミも、中国語サイトを立ち上げようと考えているようだ。すでに長い間発信しているサイト、たとえば某通信社の中国語サイトもあるが、覗いてみるとタイトルまで見られるものの、多くが中身までは読めない。制限されているのか、それとも日本に置かれたサーバーの容量が少ないのか、原因は不明だ。日中間でホットなニュースが出ると、必ずそのサイトはパンク状態になることから、おそらくサーバーの容量に問題があるのだろう。

 他にもいくつかの日本のマスコミのサイトは、中国語表示も取り入れているが、まだ本当の情報を発信しているとは言えない。
 中国における欧米のニュースサイトを読んでみると、すべての記事の真ん中には必ず広告スペースがあり、周囲にも広告が付いている。記事自体は無料。日本の中国語サイトは、そのような形態をとっていない。ニュースだけを流している。

 これは日本の大手新聞社の有料サイトのやり方と一致している。日本の有料サイトの場合、複雑な支払い体制を敷き、できるだけ有料会員を増やさず、紙媒体を延命していきたいという気持ちが、あまりにも明らかである。しかし、このようなやり方では、中国語でニュースを出しても、ほぼ間違いなく経営は成り立たないだろう。

 アニメ、音楽、映画などの日本関連の情報発信は、欧米と比べると決して少なくないが、それは日本の主体的な発信とは言いにくい。カルチャーは最終的に人の見方に影響を与えるが、突発的に起こった政治問題、経済事件を解明するには、やはり記事という手段が必要だ。しかし、日本のマスコミはその手段をあまり多く持っていない。

 日本に行けば、あまりにも多くの中国報道に出合う。ただし、そのほとんどは中国に届いていない。そもそも、中国関連記事を書く日本の記者は、受け手を日本人だけと設定している。日本のマスコミには、中国で有名になった記者、コラムニストは少ない。
 また記事自体も、中国語に訳してインターネットに流して面白いと思われるものはそう多くはない。結局、大量の中国関連の情報は、日本の嫌中感情を醸成するには役立っても、そのほとんどが一歩も日本の国境を越えていないのである。