宮崎正弘の国際ニュース・早読み
中国の将来について 2冊の本
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
◎ BOOKREVIEW ◆書評 ◇しょひょう ▼ブックレビュー ☆
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
(宮崎正弘のコメント)
中国人有力者のホームパーティでは何が語られているか?
われわれの知らない内部事情から推測できる中国の深層は濃霧注意報
♪
福島香織『中国「反日デモ」の深層』(扶桑社新書)
@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@
著者は2017年に中国共産党に体制変革が起きると予測する。『反日』を口実に、膨張する社会不満の爆発、潜在的な民主化へのうねりは、いずれ「革命」か「体制変革」かの選択を迫る状況をもたらすだろう、と数々の現場を歩いてきた筆者らしい予測が重厚に展開されている。
また最近の中国人は、外国人ジャーナリストも平気で自宅によび、ホームパーティでは気軽にほかの友人や共産党幹部を紹介する傾向がある。福島さんも中国いたるところの知り合いのパーティに招かれ、ホスト役のみならず客人の中国人からも巧妙にホンネを聞き出してくる「才能」がある。
さて本書ではいくつかの機密情報的な情報が網羅されているのだが、びっくりするほどのニュースもさりげなく盛り込まれている。
たとえば、孫文百周年記念事業で、孫文とならぶ革命家=黄興の記念式典が中止された。黄興は孫文を支えた革命の武力を代弁した。ジャッキー・チェン主演の映画(1911)でも、この黄興はきわめて客観的平等に描かれていたが、『孫文は旗のごとく、黄興は剣のごとく』と比喩された。
福島さんは次の情報を伝える。
「黄興の曾孫・黄偉民氏が湖南省長沙市で行おうとしていた辛亥革命百周年記念事業は中止命令がでた。北京国家劇院で初めて上演される予定だった孫文をテーマにした歌劇『中山・逸仙』も突然、上演中止命令が下った」という。
同様に各地の知識人(それも共産党シンパら)が予定していた孫文革命のシンポジウムも片っ端から中止命令がでた。
えっ、それじゃ共産革命前史として高い評価を与えてきた孫文史観の大幅な塗り替えか、と誤解しそうになる。
ところが、そうではなかった。
党中央宣伝部は「孫文を愛国情操教育に使うのはよいが、三民主義や五権分立を語ることは許されない」と杓子定規な命令だったのである。
三民主義を民主化と誤認されて、共産党批判に繋がると大変だ、というわけだ。
当時の宣伝部長は李長春、次の同ポストは劉雲山、ともに江沢民べったりの腰巾着であるところに救いはない。いや、こういう頭の硬すぎる原理主義者らが宣伝の中枢にある以上、かえって社会騒擾は拡大し、習近平政権の寿命を縮めるかも知れないが。。。。
日本人のしらない中国最新情報に溢れる書である。
△
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
◎ BOOKREVIEW ◆書評 ◇しょひょう ▼ブックレビュー ☆
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
ベネチア共和国の末期に酷似してきた通商国家としての中国
貿易路の衰退も一員だが、重大な貿易相手国の崩壊の道連れになった
♪
黄文雄・石平『中国の終わりの始まり』(徳間書店)
@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@
歴史家、文明批評家である黄文雄氏と、元中国人、石平氏との劇談。
ふたりとも中国批判の先端に立つ論客だが、歯に衣を着せぬ物言いがえんえんと続いて、多くの読者には一種快感がもたらされる。
対談では十年以内に『反日のツケ』によって、中国は崩壊するという予測。つまり「中華の法則」に従えば、大破局が見えており、中国共産党定刻の崩壊が視野にはいったとする。
黄氏はベネチアの終わりと中国から聞こえ始めた断末魔の声が似ているとし、その理由はいまの中国は「通商国家」であり、改革開放以後の中国は通商しか生きる道がなく、その貿易圏を喪失すると、かの国家は崩壊に到ると、いささか乱暴な結論かと思いきや、そうではなく、次のたしかな理由を挙げている。
「ベネチア共和国の冨は狭い人口島だけにとどまらず、海上の広大なネットワークにありました。そのベネチアが没落したのは地中海貿易から大航海時代という時代の変化があったこと、さらには1618年から北方のドイツで30年にもわたる宗教戦争が起きたことが原因でした。これによって通商相手のドイツ地方が荒廃したためベネチアの商品が売れなくなってしまった。貿易相手の没落の道連れになった」
その状況に中国が似てきた、というわけだ。
このあと二人の対談テーマは多岐に亘るが、やがて最後に中国は分裂にいたるだろう、と予想しつつ、石平氏が次のようにまとめる。
「分裂すると言うことは、すなわち中華思想を捨てるということなんです。普通の国々になる。そうなることが、中国人にとっても一番幸せでしょう。ただし、中国人にそういう智慧があるか、どうか」にかかっているという。
各頁の下段に珍しい写真がついていて、すべてを通読しても愉しい本に仕上がった。
○○○ ○○○ ○○
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
宮崎正弘の最新刊
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
発売中!
♪
宮崎正弘の最新刊
『現代中国 国盗り物語―――かくして反日は続く』(小学館101新書、定価756円)
http://www.amazon.co.jp/dp/4098251450/
(上記アマゾンでも申し込めます↑)
△ ◎◎◎◎◎◎
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
読者の声 どくしゃのこえ READERS‘ OPINIONS 読者之声
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
♪
(読者の声1)貴著『現代中国「国盗り物語」』(小学館新書)をすぐさま読了しました。この新刊書にあるように、精力的な著作活動、恐れ入るばかりです。
非常に興味深く、楽しんで読み進めることが出来ましたが、きびきびした叙述に躍動感があり、すいすい頭に入ります。
プロローグで、匪賊が権力を握って皇帝となるという、シナの伝統を簡潔にまとめていらっしゃる記述において、今回成立した「習金平政権」が匪賊政権の伝統に沿っている点、しかし、「何の特徴も独自性もない」点など、シナの王朝史における現政権の意義を要領よく明示されているので、そのまま学生たちに暗記させたいほどです。
じつに簡潔なうえ、値段も手ごろなので、現代中国理解の好著として、講義でも履修生たちに勧めたいと思います。
(YN生、大學教授)
(宮崎正弘のコメント)勇気づけられる御感想を頂きました。まことにそのように若い人々に読まれることが望ましいのですが
◎ BOOKREVIEW ◆書評 ◇しょひょう ▼ブックレビュー ☆
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
(宮崎正弘のコメント)
中国人有力者のホームパーティでは何が語られているか?
われわれの知らない内部事情から推測できる中国の深層は濃霧注意報
♪
福島香織『中国「反日デモ」の深層』(扶桑社新書)
@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@
著者は2017年に中国共産党に体制変革が起きると予測する。『反日』を口実に、膨張する社会不満の爆発、潜在的な民主化へのうねりは、いずれ「革命」か「体制変革」かの選択を迫る状況をもたらすだろう、と数々の現場を歩いてきた筆者らしい予測が重厚に展開されている。
また最近の中国人は、外国人ジャーナリストも平気で自宅によび、ホームパーティでは気軽にほかの友人や共産党幹部を紹介する傾向がある。福島さんも中国いたるところの知り合いのパーティに招かれ、ホスト役のみならず客人の中国人からも巧妙にホンネを聞き出してくる「才能」がある。
さて本書ではいくつかの機密情報的な情報が網羅されているのだが、びっくりするほどのニュースもさりげなく盛り込まれている。
たとえば、孫文百周年記念事業で、孫文とならぶ革命家=黄興の記念式典が中止された。黄興は孫文を支えた革命の武力を代弁した。ジャッキー・チェン主演の映画(1911)でも、この黄興はきわめて客観的平等に描かれていたが、『孫文は旗のごとく、黄興は剣のごとく』と比喩された。
福島さんは次の情報を伝える。
「黄興の曾孫・黄偉民氏が湖南省長沙市で行おうとしていた辛亥革命百周年記念事業は中止命令がでた。北京国家劇院で初めて上演される予定だった孫文をテーマにした歌劇『中山・逸仙』も突然、上演中止命令が下った」という。
同様に各地の知識人(それも共産党シンパら)が予定していた孫文革命のシンポジウムも片っ端から中止命令がでた。
えっ、それじゃ共産革命前史として高い評価を与えてきた孫文史観の大幅な塗り替えか、と誤解しそうになる。
ところが、そうではなかった。
党中央宣伝部は「孫文を愛国情操教育に使うのはよいが、三民主義や五権分立を語ることは許されない」と杓子定規な命令だったのである。
三民主義を民主化と誤認されて、共産党批判に繋がると大変だ、というわけだ。
当時の宣伝部長は李長春、次の同ポストは劉雲山、ともに江沢民べったりの腰巾着であるところに救いはない。いや、こういう頭の硬すぎる原理主義者らが宣伝の中枢にある以上、かえって社会騒擾は拡大し、習近平政権の寿命を縮めるかも知れないが。。。。
日本人のしらない中国最新情報に溢れる書である。
△
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
◎ BOOKREVIEW ◆書評 ◇しょひょう ▼ブックレビュー ☆
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
ベネチア共和国の末期に酷似してきた通商国家としての中国
貿易路の衰退も一員だが、重大な貿易相手国の崩壊の道連れになった
♪
黄文雄・石平『中国の終わりの始まり』(徳間書店)
@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@
歴史家、文明批評家である黄文雄氏と、元中国人、石平氏との劇談。
ふたりとも中国批判の先端に立つ論客だが、歯に衣を着せぬ物言いがえんえんと続いて、多くの読者には一種快感がもたらされる。
対談では十年以内に『反日のツケ』によって、中国は崩壊するという予測。つまり「中華の法則」に従えば、大破局が見えており、中国共産党定刻の崩壊が視野にはいったとする。
黄氏はベネチアの終わりと中国から聞こえ始めた断末魔の声が似ているとし、その理由はいまの中国は「通商国家」であり、改革開放以後の中国は通商しか生きる道がなく、その貿易圏を喪失すると、かの国家は崩壊に到ると、いささか乱暴な結論かと思いきや、そうではなく、次のたしかな理由を挙げている。
「ベネチア共和国の冨は狭い人口島だけにとどまらず、海上の広大なネットワークにありました。そのベネチアが没落したのは地中海貿易から大航海時代という時代の変化があったこと、さらには1618年から北方のドイツで30年にもわたる宗教戦争が起きたことが原因でした。これによって通商相手のドイツ地方が荒廃したためベネチアの商品が売れなくなってしまった。貿易相手の没落の道連れになった」
その状況に中国が似てきた、というわけだ。
このあと二人の対談テーマは多岐に亘るが、やがて最後に中国は分裂にいたるだろう、と予想しつつ、石平氏が次のようにまとめる。
「分裂すると言うことは、すなわち中華思想を捨てるということなんです。普通の国々になる。そうなることが、中国人にとっても一番幸せでしょう。ただし、中国人にそういう智慧があるか、どうか」にかかっているという。
各頁の下段に珍しい写真がついていて、すべてを通読しても愉しい本に仕上がった。
○○○ ○○○ ○○
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
宮崎正弘の最新刊
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
発売中!
♪
宮崎正弘の最新刊
『現代中国 国盗り物語―――かくして反日は続く』(小学館101新書、定価756円)
http://www.amazon.co.jp/dp/4098251450/
(上記アマゾンでも申し込めます↑)
△ ◎◎◎◎◎◎
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
読者の声 どくしゃのこえ READERS‘ OPINIONS 読者之声
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
♪
(読者の声1)貴著『現代中国「国盗り物語」』(小学館新書)をすぐさま読了しました。この新刊書にあるように、精力的な著作活動、恐れ入るばかりです。
非常に興味深く、楽しんで読み進めることが出来ましたが、きびきびした叙述に躍動感があり、すいすい頭に入ります。
プロローグで、匪賊が権力を握って皇帝となるという、シナの伝統を簡潔にまとめていらっしゃる記述において、今回成立した「習金平政権」が匪賊政権の伝統に沿っている点、しかし、「何の特徴も独自性もない」点など、シナの王朝史における現政権の意義を要領よく明示されているので、そのまま学生たちに暗記させたいほどです。
じつに簡潔なうえ、値段も手ごろなので、現代中国理解の好著として、講義でも履修生たちに勧めたいと思います。
(YN生、大學教授)
(宮崎正弘のコメント)勇気づけられる御感想を頂きました。まことにそのように若い人々に読まれることが望ましいのですが