パルデンの会

チベット独立と支那共産党に物言う人々の声です 転載はご自由に  HPは http://palden.org

その3 <日朝協議>北朝鮮が調査委説明 日本、制裁一部解除検討へ

前項からの続き

第3の、「特別権限(全ての機関を対象とした調査を行うことのできる権限)
が付与された特別調査委員会を立ち上げる」は、この( )の中も「朝鮮中央通
信」の報道ではなかったです。そもそもメンバーの名前を見たって分からないで
す。本当に権限があるかどうかが分かるのは、金正恩の決裁した書類が出てくる
ことだけです。

 それを取れるのかどうか。サインした書類を見せなさい、と。そうじゃない限
り形式になってしまいます。

 次に第5、「調査の過程において日本人の生存者が発見される場合には、その
状況を日本側に伝え、帰国させる方向で去就の問題に関して協議し、措置を講じ
る」とあります。これは中山恭子首元大臣が大変危惧していました。先ほど平沼
先生がおっしゃったことです。

 協議じゃだめなんです。「行きたくない」と言わされるに決まっているんです。
なぜ協議すると書かせたのか。「帰国させる」となぜ書けなかったのか。これも
危険です。

 そして第6、「北朝鮮滞在、関係者との面談、関係場所の訪問」が合同調査に
なってしまうんじゃないかということです。これだけの文章しかないのであれば、
危険があふれていると思います。

 しかし、これで動いたんですから、どうするのかとは思いますが、専門家とし
ては今申し上げた通りの危機感を持っています。

櫻井よしこ

 どうもありがとうございました。この調査開始の文章を1行1行見ながらの今
の西岡さんの専門家としての分析は、非常に問題点を明らかにしてくれたと思い
ます。そこで荒木さん、今回のこの文書ですが、さっき北朝鮮側が前のめりになっ
ているという情報が流れたけれども、実際に前のめりになっているのは日本側の
外務省ではないかとおっしゃいました。これは実は非常に重要なことなんですね。

 安倍政権が拉致問題の解決を政治的課題としていて、そのことに一生懸命になっ
ていることは家族会も救う会もみんな承知のことで、大変ありがたいことだと思っ
ているんですが、それとは別に、外務省が前のめりになったとしたら、これまで
外務省がどのような交渉をしてきたかということを私たち全員が知っているわけ
で、必ずしも高い評価ではないわけです。

 その意味で、外務省前のめりとおっしゃった点に立って、この文章をもう一回
見直していただけますか。

◆日本だけが合意文書にしばられてしまう

荒木和博

 最初に申しましたように、再調査と言うのはあくまで口実です。北朝鮮側の面
子を立てて逃げ道を作ってやるという以外の意味はないと思います。これを真面
目に外交交渉だと思ってそういう文書だと思うと、まさに今西岡さんが指摘した
通りの穴だらけというか、非常に危険な文書になってしまうと思います。

 しかし、今の外務省の優先順位は、他の国と同じような手続きに伴う外交交渉
をやるという以上の枠を越えられる人がいないんじゃないだろうかと正直言って
思います。そうではない相手に対して、外務省がどうしなければいけないのかと
いうことまでは、伊原局長もその上の方も考えが至っていないのではないだろう
か。

 もしこれが、とにかく拉致被害者を取り返すための文書を作るのであれば、もっ
と簡単にしてしまって、簡潔なものにしてしまう手があるわけですが、様々なこ
とを書きこんでしまったということは、北朝鮮は全くしばられるつもりはないで
しょうが、日本的に言えばこういうものを書いてしまえばしばられることになっ
てしまうので、そういう意味でも非常に危険なものではないだろうかという感じ
がします
◆合意文書にはたくさんの穴がある

櫻井よしこ

 この合意文書が北朝鮮を縛るというよりも、むしろ日本を縛る。例えば遺骨の
問題について多少の進展があったらそれなりのことをしなければならない。他方
拉致問題で進展がない危険性だってあり得るというご指摘ですね。

荒木和博

 北朝鮮側は、いつどうやって反故にするか、どうやって取るものだけ取って後
は知らん顔をするかということだけを毎日考えているわけですから。その前提で
やらなければいけないんじゃないかと思います。

櫻井よしこ

 ありがとうございました。今日の集会はただ単なる批判に終わらせたくないと
私は思っています。交渉は始まったわけです。何と言っても始まったわけです。
これを何としてでも成功させなければならない。拉致被害者を取り戻さなければ
ならないわけです。

 この文書そのものには今分析をしていただきましたようにたくさんの穴があり
ますが、それを越えての政治判断に踏み切ったからには、今までと同じように家
族会、救う会、議連、そして政府が一体となって何としてでもこの交渉を成功さ
せなければならない。

 じゃあ成功させるためには拉致被害者を全員取り返すためには、これから私た
ちが何をすべきなのか。実はこれが一番難しいところなんですね。交渉を再開さ
せるまでのプロセスも大変だっただろうと正直思います。しかしこれからの方が
もっと大変なんです。

 これから私たちは、各々の立場がありますけれども、この拉致問題解決に向け
て絶対に失敗しない、取り返すことを確実にするために何をなし得るかというこ
とについて最後にお話をいただきます。平沼先生からお願いします。

◆しっかりとした制裁を続けること

平沼赳夫

 西岡先生がるる指摘されて、私も冒頭言いましたが、この合意文書と言うのは
重箱の隅をつつくように見ると瑕疵だらけなんです。だけど例えば総理官邸の会
議に松原先生も出られましたが、総理大臣も出た会合において、こういったとこ
ろが問題ですよという文書を我々は出しました。

 しかし、やはり総理以下まなじりを決してやっていることなんだから、我々と
してはこの動きを評価して全面的に支援をしたい。そういうこともはっきり申し
上げました。その前提として、私は絶対に大切なことはやはり日本人がこの問題
の全面解決で団結をすることなんです。

 もう一つは、これまで苦しめてきた制裁というものをしっかりやっていく。こ
れに私は尽きると思うんです。例えば軍事力のあるアメリカなんかは、拉致の問
題に遭遇すると、クリントン大統領やカーター大統領が平壌に行けばその日のう
ちに被害者が出てくる。それは力があるからなんです。

 彼らはこずるく日本の今の憲法の問題や、そして日本の軍事力の問題を冷徹に
見ているわけです。ですから本当に日本が毅然としてやるには、さっきご意見が
ありましたが、平壌に爆弾を落とすぞというくらいの力を日本は持たなければだ
めなんですが、これは時間がかかります。有本さんがよく言われる憲法の改正だっ
て時間がかかるわけです。

 ですからこれには国中がもう一度しっかりと団結することと、そしてしっかり
とした制裁を続けることです。この問題で非常に造詣の深い中山恭子先生が、私
も最初に言いましたが、交渉が始まる前に条件を緩和するというのは愚の骨頂だ
と。これは政府の弱腰の現れですから、ここはしっかりしていかなければならな
いということで、2つのことを毅然とやっていかなければと思います(拍手)。

櫻井よしこ

 ありがとうございました。次に、他の政治家の方々もいらしてますので、松原
仁さん。この交渉が始まってしまいましたので何としてでも成功させなければな
らない。そのために各々の立場でできることは何かについて。

◆5人返して反北キャンペーンが吹き荒れたトラウマが北にある

松原 仁

 日本政府は、どういうことを北がやってきた時にそれに対してどう向き合うか
を明快にしておくことが私は必要だと思っています。さきほども言いましたが、
オールジャパンでジャッジをすべきだと。つまり私は前から申し上げているよう
に、特定失踪者について日弁連の人権侵害申立ての人たち、そして認定被害者。
ここは明快にその帰趨を明らかにすべきだと思います。

 死んでいるならば本当に死んでいる証拠を出せ、と。生きているなら戻せとい
うのが当然のことだと思っています。この最低限の条件をきちんと付きつけた上
で、他も当たるということをやってくると思います。

 その上で大事なことは、例えば日本政府は寺越さんに関して拉致とはしていま
せんが、これは明らかに拉致ですから、こういったものに日本政府がどう向き合
うかということも大きなポイントになります。

 では具体的にどこまでどうなった時に、どこまで北朝鮮に対して向き合うのか。
100点満点はないわけですから、それに関して政府だけが判断するのではなく、
先ほどから申し上げているように、日本側は北が出してきたものをジャッジ(検
証)をするぞ、と。その上でなければ我々は判断しないぞ、と。そのジャッジを
するメンバーは、前のめりの外務省ではとんでもないことになってしまう。私は
この問題では外務省を信用しておりません。

 従って、この問題に関しては、私は基本的にここにおられるような、拉致議連
の会長を含む何人か、そして救う会、ここに増元さんがおられますが家族会、調
査会。こういったオールジャパンで、後は先ほど申し上げたような櫻井さんのよ
うなずっとこの問題に寄り添ってきた方々。これはよく分かっているわけですか
ら、そういう方々が北に対して、これは評価できないぞということも含めて向き
合う。

 その中から、北は北で、向こう側の立場に立った時には、確かに日本側が何を
言ったら許してくれるのか。彼らは彼らで5人返して反北キャンペーンが吹き荒
れたというトラウマがある。それは嘘ついたから当たり前だと我々は思っている
けど、彼らにとってはそれはトラウマだから、そこをどういう形できちんと解決
に向けるかというロードマップを官邸中心に作っていると思いますが、それをき
ちんとした上で戦いに臨むということがポイントです。

 その上で、オールジャパンですから、官邸だけで判断すべきではないと思って
います。以上です(拍手)。

櫻井よしこ
 ありがとうございました。参議院議員井上義行さんが来ておられます。安倍
政権の時に平壌に行かれました。その観点からも私たちたちが今すべきこと、で
きることは何かということでお願いします。

北朝鮮側が拉致問題に関して傾けてきた努力を評価した外務省

井上義行

 私は、今話があった西岡さんの解説、荒木さんの解説、あるいは櫻井さん、平
沼さんの考え方とほぼ同じです。今までずっとこの問題をやってきて、調査とい
うのは茶番と思っていまして、さっき荒木さんが言ったように、ストーリーの中
に調査をやって北朝鮮の顔を立てて、「あ、出てきた」。これならいいんですが、
本当に調査するんだったらこれは間違いです。あり得ない。

 ここを間違ってはいけないのは、拉致被害者の人たちは北朝鮮で働いて、賃金
で生活しているのかということです。つまり拉致被害者の人たちは、自分たちで
とうもろこしを作って食べてるわけでしょう。配給があるわけでしょう。配給が
あるのなら、生存者リストがあるんです。それを出すか出さないかなんです。

 私もこれまで北朝鮮に行って交渉しましたが、その話を口酸っぱく言いました。
これは拉致被害者の生存者リストを出すか出さないかの問題なんです。ですから、
相手に都合のいい調査をしてしまったら、相手のペースになってしまうというこ
となんです。これは一番気を付けなければいけないことで、口酸っぱく言ってき
たことです。

 今回の合意文書の中で一番気になっているのは、先ほど荒木さんから話のあっ
たように、日本の外務省が前のめりになっているということです。

 この前文の中で、なぜ「日本側は北朝鮮側に対し、1945年前後に北朝鮮域内で
死亡した日本人の遺骨及び墓地」ここから始まっているのか。本来であれば、拉
致被害者及び行方不明者、ここからスタートすべきなんです。

 そしてもう一つのポイントは、次の「北朝鮮側は、過去北朝鮮側が拉致問題
関して傾けてきた努力を日本側が認めたことを評価」となっているんです。つま
りですよ、北朝鮮が今まで日本側に示してきた調査とは何かを日本側が評価した
ということを日本外務省が言ったということでしょう。

 そして「従来の立場はあるものの」とあるのは、拉致被害者が死亡したという
ことはあるものの、ということなんです。ここが一番危険だと思っています。で
すからこういう前提の調査というものは、我々が求めているものではないんだと。
拉致被害者の生存者リストを出せ、そして拉致被害者を返せと強く言わないと彼
らのペースにはまってしまうということなんです。

 ですから、我々は2、3人とかそういう問題じゃない、すべての拉致被害者
帰ってくるまで我々は戦うぞということをお誓いします。宜しくお願いいたしま
す(拍手)
櫻井よしこ

 ありがとうございました。次に自民党拉致問題対策本部事務局長で、めぐみさ
んと同じ寄居中学の同窓の塚田一郎さんお願いいたします。

◆安倍政権が安定政権だから交渉の必然性が生じてきた

塚田一郎

 みなさんお疲れ様です。山谷えり子本部長が欠席で私からご挨拶をさせていた
だきます。今までの各先生方の貴重な提言はその通りだと思っています。

 私がまず申し上げたいことは、どうしても一番大事なことが国民の団結です。
拉致問題に対してオールジャパン。すべての国民がこのことに怒りを持って最終
解決まで戦い抜くというその世論が、すべての結びついていくと私は思っていま
す。是非まずそのことを皆様に改めてお願いしたいと思います。

 ご存じの通り、安倍内閣は二度目の内閣でようやく再調査という形になりまし
たが、まさにこれからが本当の意味での勝負です。

 先ほど来、なぜ今北朝鮮がというご意見がありましたが、私は、外貨が枯渇し
ているという状況も踏まえた上でもう一つ、安倍政権が安定政権であると、ここ
で交渉しなければならないという必然性が生じてきたんだなあと思っています。

 小泉内閣が安定政権の時に大きな交渉の成果があって5人の方が帰国された。
しかしそれから10年間、まさに空白の状況が続いています。ここで、安倍内閣
が最後の解決のための日本の内閣だということを北朝鮮側に思い知ってもらう必
要があります。

 そのためにはもちろん経済制裁も今までやってきたことをきちんと履行して、
交渉が進まなければ、結果が出なければ解除しない。これも大事ですが、日本と
言う国がいざという時に、北朝鮮に対して決定的なダメージを与えるくらいの国
だという気概を今示す必要があると思います。

 政府は集団的自衛権の問題も含め、憲法改正のもんだいも含め、今安倍内閣
強い日本を取り戻すという気概をみせていることが私は非常に重要だと思います。
最終的には、日本の国民だから、北朝鮮に我々の自衛隊が乗り込んでいって拉致
された被害者を全員救出する。それくらいの国でなければ主権国家とは言えない
わけですから、そういう強い国だということを我々国民がしっかりと安倍内閣
支援する形も含めて示していくこと。これが何よりも私は最終解決に必要だと思
います。

 もし外務省が、政府が誤った方向で、交渉優先で日朝交渉を進めようとした時
に、その歯止めになる大きな力で、皆様からしっかりと政府を監視していただく。
それを我々与党も、しっかりと監視をする立場でこれからもこの問題に取り組ん
でいくことをお約束してご挨拶といたします。宜しくお願いいたします。ありが
とうございました(拍手)。

櫻井よしこ

 どうもありがとうございました。今、政治家の皆様方から、この交渉、調査を
絶対に成功させるには何をしなければいきえないかということについて、それぞ
れの立場からお話を聞きました。専門家としての西岡さんと荒木さんのお考えを
聞きたいと思います。まず西岡さんから。

田口八重子が肝臓の病気で入院 病気の人から先にと交渉を

西岡 力

 北朝鮮は何か一つ準備しています。2008年に既に準備した「タマ」がある
わけです。彼らは簡単ではありません。2002年から2004年にかけて偽の
遺骨を出そうという準備をして様々なことをやってきました。それと同じような
ことを準備していると思います。そして残念ながら今彼らの交渉を主導している
のは、「8人死亡」をそのままにしようという勢力だとの情報を得ています。

 ですから冒頭申し上げた、被害者に危害を加える、そして証拠を作るという危
険性さえある厳しい交渉が今進んでいるということです。

 しかし、先ほど平沼先生もおっしゃいましたが、我々のところには確実な生存
情報があります。去年10月に菅官房長官がめぐみさんの生存について、「もち
ろん生存している」と記者会見で話をしています。それ以外の人たちについても
8人、そしてそれ以外の人たちの生存情報がたくさん出てきています。

 相手にカードを見せることになりますので、それは言わないということでいい
と思いますが、こちらを甘く見てもらっては困るということも含めて言っておか
なければいけない。ただ心配なのは、例えば田口八重子が肝臓の病気で入院した
という情報もあります。病気の人を先に返してほしいと。あるいは政府に病気だ
という情報があるのならその人のことをきちんと最初に交渉してほしい。こちら
は分かっているんだず、と。

 先ほど井上先生が「リストを出せ」とおっしゃいましたが、「こっちにもある
んだぞ」、「変なことを出してきたら違っていると言いますよ」という交渉を是
非してほしいと思います。

櫻井よしこ

 荒木さんはいかがでしょうか。

工作員、拉致の協力者摘発で意思を示せ

荒木和博

 12年前の春ですが、有本嘉代子さん、恵子さんのお母さんが何度も、「恵子
だけじゃだめなんです」と訴えておられました。あの頃、北朝鮮側は明らかに有
本恵子さんを第三国に出して、そして拉致問題の収束を図ろうという意図があっ
たんだろうと思います。

 実際にそれをやれば北朝鮮は拉致を認めなくてすむ。認めないで、しかし日本
側の中で「北朝鮮は柔軟に