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香港での抗議行動への習近平の危機感、焦り


果たして 第二の 天安門事件を 習金平は繰り返すのか?

そして 日本の 安倍首相は どう言った呼びかけをするのか?


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香港での抗議行動への習近平の危機感、焦り


2014年10月03日(金)佐々木智弘
 2017年の香港特別行政区行政長官選挙で一般有権者による直接選挙、すなわち普通選挙を導入する。しかし全国人民代表大会は先日民主派など中国 に好ましくない人物の立候補を事実上制限することを決定した。その結果、香港の学生や「民主派」らの抗議活動がエスカレートしている。
 これについて、習近平総書記が直接的に言及したことが公式メディアに掲載されたことは私が知る限りない。しかし強い関心はもっているようで、9月21日の重要講話での発言の一部がそのことを示唆しているように思われる。習近平はどんなメッセージを発したのだろうか。
「協商民主」と「選挙民主」
 9月21日、中国人民政治協商会議成立65周年記念大会が開かれ、習近平が重要講話を行った(全文は『人民日報』2014年9月22日に掲載 http://cpc.people.com.cn/n/2014/0922/c64094-25704157.html)。この中で習近平は「協商民主」の重要性を強調した。「協商」という言葉は,日本語としてあまり使われる言葉ではない。話し合いとか協議などという意味に近く、「協商民主」は話し合い民主とか協議民主と訳される。ここでは中国語のまま協商民主とする。
 この協商民主は決して目新しい言葉ではないが、2012年の中国共産党第18回全国代表大会(第18回党大会)で強調されたことで特に注目されて いる。ここでいう民主とは、政策決定や指導者選定のような政治的選択に人々が参加することを指している。共産党は人々が話し合いによって選択に参加する協 商民主を支持、強調しているのだが、これを選挙民主、すなわち選挙によって選択に参加することへのアンチテーゼとして掲げている。
 選挙民主は西側で見られるように選挙は利害対立を残し、政治的不安定を助長するが、協商民主は話し合いにより共通利益を最大化でき、政治的安定をもたらすという。共産党にとって協商民主は西側のような政治的多様性を認めず、一党支配を正当化するための提起ともいえる。
 習近平は重要講話で協商民主について、次のように発展させると言っている。
中国共産党、人民代表大会、人民政府、人民政協、民主党派、人民団体、末端組織、企事業単位、社会組 織、各種シンクタンクなどの協商チャネルを拡大する。政治協商、立法協商、行政協商、民主協商、社会協商、末端協商など各種の協商の展開を深める。健全な 提案、会議、座談、論証、公聴、公示、評価、コンサルタントとネットワークなどの多種の協商方式を構築する」
 この内容も決して目新しいものではない。しかし具体的な内容に習近平自らが言及したことに意義があり、話し合いによる安定第一の姿勢を示している。
習近平が「選挙で投票する権利」の重要性に言及
 習近平の重要講話が興味深いのは、協商民主だけでなく、選挙や投票についても言及している点である。習近平は次のように発言している。
「人民が民主の権利を享有するかどうかは、人民が選挙で投票する権利を有するかどうかを見なければならない。また人民が日常の政治生活で持続的に参加できる権利を有するかどうかも見なければならない。人民が民主選挙の権利を行使するかどうかを見なければならない」

「選挙以外の制度と方式を通じて人民の代表を国家生活と社会生活の管理に参加させることも非常に重要である。人民が投票の権利を有するだけでは広範な参加の権利を有するとはいえない。人民が投票時にだけ目覚め、投票後に休眠期に入る。このような民主は形式主義である」

「人民は、選挙、投票を通じて権利を行使すること、人民内部の各方面は重大な決定の前に十分な協商を実行し、共同の問題でできるだけ一致した意見を取得す ることが、中国の社会主義民主の二つの重要な形式である。中国ではこの二つの民主形式は相互に取って替わる、相互に否定するものではない。相互に補充し、 互いに補い合いよい結果となるもので、共同で中国社会主義民主政治の制度の特徴と優勢を構成する」
 習近平は選挙民主という言葉を発してはいない。しかし9月24日付『人民日報』に掲載された関連の評論員文章は次のように指摘している。
「選挙民主と協商民主が相互補充であり、互いに補い合いよい結果となることが、中国の社会主義民主政治の制度の特徴と優勢を共同で構成している」
 この指摘からは、習近平が選挙民主を協商民主のアンチテーゼとは必ずしもとらえていないかのようである。
香港での抗議活動へのメッセージ
 しかし、重要講話の中で習近平は選挙や投票の権利の行使を形式としてとらえており、どのような政策か、どのような候補者かといった選択という機能 には言及していない。そのことは、評論員文章の指摘とは異なり、習近平は選挙民主を協商民主のアンチテーゼとして強く意識していることの表れである。
 それならば、なぜ習近平は形式としての選挙や投票の権利に言及したのだろうか。中国国内で選挙をめぐる改革議論が盛り上がっているわけではなく、 むしろ政治改革論議に対しては引き締めが強まっている。これまで習近平自身が言及することのなかった選挙、投票の権利への言及は実に不自然なのである。
 このタイミングでの習近平の選挙、投票発言は、香港での抗議活動に対するメッセージのように思われる。
 『人民日報』はこうした香港での抗議活動を報じていない。そのような中での習近平の発言には、行政長官選挙への投票は香港住民の権利として実施さ れるもので、香港でも民主形式は維持されること、香港の将来は選挙だけで決められるものではないこと、抗議活動で騒ぐことは選挙を前にした今だけの形式主 義にすぎないことなどの含意を読み取ることができる。
習近平の「一国二制度」の危機への焦り
 しかし、こうしたメッセージは香港の抗議行動を沈静化させることにはならない。むしろエスカレートさせるだろう。
 それでも習近平自身がこれまで発してこなかった選挙、投票にあえて言及したことは、香港での抗議活動に対する危機感の表れといえるだろう。
 この香港での抗議行動が問いかけていることは,中国共産党が「一国二制度」を遵守するかどうかである。そしてその成り行きは台湾統一と深く関係している。
 9月26日、習近平が台湾統一団体連合訪問団と会見した際、「一国二制度」について言及したことは偶然ではない。習近平は次のように発言している(記事は『人民日報』2014年9月27日に掲載 http://cpc.people.com.cn/n/2014/0927/c64094-25746175.html)。
「『平和統一、一国二制度』がわれわれの台湾問題解決の基本方針であり、われわれはこれが国家統一実現の 最もよい方式だと思っている。われわれは最大の誠意をもって、できる限りの最大の努力で平和統一の見込みを勝ち取る。なぜならば平和の方式で統一を実現す ることが台湾同胞を含む中華民族の全体の利益に最も符合しているからである」

「台湾での『一国二制度』の具体的な実現形式は台湾の現実の情況を十分考慮し、両岸各界の意見や建議を十分吸収することが、台湾同胞の利益を十分に配慮するための措置である」
 台湾が受け入れていない「一国二制度」について習近平が言及する必然性はなく、このタイミングで言及したのも香港での抗議行動と無縁ではないだろ う。台湾にとっては香港での抗議は「一国二制度」に対する原則的なスタンスに影響を与えるものではないだろう。しかし習近平から見れば、香港での抗議行動 のエスカレートが「一国二制度」のさらなる形骸化を台湾に印象づけることを避けたいのである。
 習近平が形式としての選挙や投票の権利行使に言及したこと、さらに台湾からの訪問団に対し彼らが受け入れていない「一国二制度」に言及すること は、香港の抗議行動への対応としては決して得策ではない。習氏の対応には焦りすら感じられ、習氏が強い危機感を抱いていることが分かる。
香港の抗議デモを「違法行為」と認定
 10月1日付『人民日報』の4面に、評論員による香港での「セントラル占拠」抗議行動に関する論説「良好な発展の局面を大切にし、香港の繁栄、安 定を守る」が掲載された。いよいよ党中央が収拾に乗り出すのではと思わせる論説の発表である。その主な内容は以下のとおりである(http://cpc.people.com.cn/pinglun/n/2014/1001/c78779-25770425.html)。
「『セントラル占拠』は香港社会の基礎を破壊する」
「ごく少数の『セントラル占拠』人士は個人的な利益のため、法律をなき物のように見なしている。彼らは民衆を扇動し、あらゆる業種を妨害し、衝突を形成 し、すでに香港民衆の正常な生活を深く妨げており、香港民衆の人身、財産の安全に対してすら脅威となっている。彼らのこのような違法行為は当然法律の責任 を負わなければならない。このためわれわれは特別行政区の法に基づく措置を断固支持する」

「『セントラル占拠』の発起人、参加者はできるだけ早くあらゆる違法行為を停止するよう忠告する」

「香港では政府に批判や提言をする道は完全に通じており、いかなる人士ももし全人代常務委員会の決定に対し異なる意見があれば、完全に正当なチャネルを通 じて訴えを反映でき、情況を疎通させることができる。『セントラル占拠』という極端な方式に訴えるべきではない。『セントラル占拠』は『疎通』ではなく、 対抗である。今のようなごく少数の人士が頑として法治に対抗し、もめ事を起こすことを選択すれば、最後には自業自得で終わる」
 この論説で注目されるのは次の3つの点である。
 第1に、「セントラル占拠」行動を起こしたのは「ごく少数」の人士として、香港の一般民衆と区別している。
 第2に、「セントラル占拠」行動を「違法行為」と位置づけている。1989年の「六・四」天安門事件では学生らの抗議行動は「動乱」と位置づけられた。そのことを思い出してしまう。「動乱」までいかなくとも、「違法行為」と位置づけた意味は重い。
 第3に、香港特別行政区の措置は法に基づいているとして正当性を付与している。
 香港での抗議行動の中心人物を取り締まるための準備が着々と進められているように思われる。

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