パルデンの会

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中国に[NO]を突きつけたスリランカ大統領選挙


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宮崎正弘の国際ニュース・早読み」
平成27年(2015)1月10日(土曜日)
通巻第4437号  <臨時増刊号>
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中国に[NO]を突きつけたスリランカ大統領選挙
親中派のラジャパクサ大統領を破ったシリセナは反中、親日、親インド派

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2015年1月8日に投・
開票が行われたスリランカの大統領選挙、番狂わせが起きた。
現職ラジャパクサ大統領の親中路線に反対してきた新人シリセナ候
補が野党連合の統一キャンペーンに成功し、51% vs 47%で当選したのだ。

これは親中路線をつきすすんできたスリランカの外交方針を根底か
ら揺るがす国際政治上の大事件。つまり中国に対して[NO]を突きつけたのが、スリランカ大統領選挙の結果なのである。

シリセナ新大統領は国際的に無名とはいえスリランカ政治ではベテ
ラン、青年時代から農業改革に挑んで、89年にはやくも国会議員。農業水利相もつとめて、タミル族過激派の暗殺部隊には二回襲撃され、窮地に立った経験もある。シリセナはシンハラ人で仏教徒である。

シリセナ新大統領は、政治的手腕は清廉潔白であるがゆえ、
未知数とはいえ前政権で保険大臣をつとめ、清潔な政治家として知られた。
そのイメージが、汚職の蔓延にあきあきした国民の期待を担った。
投票日、スリランカは厳戒態勢に入り、全土に66000名の警官と軍人を配備したが、暴力沙汰も投票妨害も発生せず、民主主義の成熟ぶりをうかがわせた。

シリセナ新大統領はすぐさま大統領宣誓就任にのぞみ「
社会と政治、経済を変革させる。それも百日以内に方針を出し、世界のあらゆる国と密接な関連を結び、外交を強化したい」と述べた。


▼選挙結果に慌てたのは中国である

勝因はラジャパクサ大統領とその一族の利権掌握、
とりわけ外国支援をうけてのインフラ整備事業、港湾整備などで利権が一族の懐を肥やし、スリランカは孫の代になっても借金を払えない状態に陥没したことへの不満の爆発である。

つまり中国がインド洋から南シナ海にかけて展開している「
真珠の首飾り」戦略の一環としてスリランカのパパンドタ港が中国軍の基地化しており、なかんずく、九月の習近平訪問の際に中国海軍の潜水艦がスリランカに寄港するなど、そのラジャパクサ一族のあまりの中国寄り外交とただれた利権関係を批判したことだった。

また若者とインテリが同時を支持したことも特筆しておくべきで、
インドは外交戦略上、シリセナ候補を間接的に支持するのは当然としても旧宗主国の英国がメディアを動員して、ラジャパクサ一族の腐敗を暴き、シリセナ候補を間接的に支援したことがおおきい。
『ファイナンシャル・タイムズ』紙も、『ザ・エコノミスト
誌も、シリセナ大統領に好感をもって事前予測を報じていたからだ。

選挙中もシリセナは「
浅はかな外交でスリランカのイメージを破損した結果、スリランカは国際社会で孤立した」などと訴え、大統領宣誓でも「今後はインド、日本、そしてパキスタン中国との友好関係を強化し、新興国との関係も区別しないで促進する」と述べた。

シリセナ新大統領はラジャパクサ政権での閣僚であり、
与党だったSLFP(スリランカ自由党の幹事長までつとめていた。
選挙直前に「新民主戦線」(NDF)を組織し、野党のUNP(
統一国民津尾)との統一候補としての立候補に成功した。
したがって新政権の首相にはウィクラマシンハ(元首相)が就く。


奥山真司
  • 2015年01月09日 15:51

中国の権力に屈し始めた西洋社会

今日の目黒は快晴です。日が出てると寒さは少しやわらぎますね。
さて、新年最初の記事の紹介です。
中国で英語の出版会社を経営していた人物による、北京政府の熾烈な検閲の経験が語られております。


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中国の圧力に屈服すること
By マーク・キット

●私は10年前に『これこそ中国』という本を出版した。

●その中で私は、自分が中国国内で築いた雑誌の出版ビジネスが、主に中国のメディアをコントロールする政府機関の圧力によってじわじわと破滅させられた様子を描いた。

●この本を出してくれることになった中国側の出版社は、この出版企画に興奮していた。本が出れば、その内容は中国内の権力者たちを苛つかせることになるのは確実だった。

●彼らは「われわれはスキャンダルが好きですし、これこそが出版にとっての最大の意義なんですよ」と言っていた。

●ところが出版する最後の段階になり、北京政府側の担当部署に見本の本を送ると、「この出版は認められません」ということになった。出版はキャンセルとなり、非公式の場で担当編集者は、自分の身の危険を感じたことを認めた。

●もちろん私は中国政府の権力についてはよく知っていた。私は中国政府による検閲(彼らは内容監察という)をほぼ毎日、しかも目の前で受けていたのだ。彼らはよく「中国人は論争や議論が好きだが、あなたの読者たちにそれを許すことはできません。とくにその読者が中国人である場合はなおさらです」という説明を聞いたことがある。

●私は何度も検閲者を憤慨させたことがある。台湾の独立を支持していると非難されたことがあるし、チベット問題に不当介入していると言われたこともある。宗教団体の法輪功をあおっていると言われたり、性的なサービスやポルノを売っているといわれたり、さらにはイスラム系の独立運動を支持していると非難されたりしたことがある。

●ところがトラブルに陥るのは、決まって検閲者たちが何かを見つけたからというわけではなく、ライバル会社が彼らに告げ口した時なのだ。

●中国での検閲というのは、商売的なツールなのであり、ビジネス的な「武器」なのだ。それは他者を害するために使われるのである。

●私の雑誌の収入が落ちたのは三行広告の欄にある「性サービス」についての「読者」からの不満によるものだ。この不満を操作したライバル会社は自分の雑誌でも三行広告の欄を始めており、しかも「気持ちのよい終わり方」をするマッサージのサービスの広告まで掲載しているのだ。

●今日では、中国政府の検閲とその後の厳しい処罰(ノーベル平和賞の受賞者である劉 暁波の抑留のような)を非難していた多くの政治・企業のリーダーたちが、共産党政府の検閲を黙って受け入れている。

●中には党を怒らせることを恐れたり、さらには中国でのビジネスに害が出ることを避けるために、あえて自ら検閲を行うものもいるくらいだ。

南アフリカダライ・ラマへの入国ビザの発行を拒否しているし、2012年のロンドンの書籍見本市は(我が社の古くからのライバルである)中国のある出版社にゲストのリストをチェックさせ、フランス在住の別のノーベル(文学)賞受賞者である高行健が会場に来るのを禁止している。

●去年の11月に中国の浙江省で世界インターネット会議が開催された時には、アップルやリンクトイン、そしてフェイスブックのような国際的なテクノロジー会社からトップの人間が集まった。

●ところがその多くの会社のサイトは中国でブロックされており、その参加者の中で不満をホスト側に表明する者は(そのチャンスがあったにもかかわらず)一人もいなかった。また、少なくとも公式の場ではこの皮肉な状態について意見を言ったものは一人もいないのだ。

●3月にはリーダーズ・ダイジェスト誌が、現地の印刷会社の要請によって中国での印刷を中止させられ、また同月にはブルームバーグ社の代表が中国における「政治的に微妙」な話題についての報道を「再考」すべきかもしれないと公式な場で述べている。

●つまり、世界は中国共産党を喜ばせるために堕落しつつあるのであり、中国というバナナの皮でわれわれは自らの恥を隠しつつあるのだ。

中国共産党の目立った功績、つまり最も偉大な成功のうちの一つは、目に見えない、まるで隣の部屋にいる化け物のように感じる大きな圧力を手に入れたことだ。この化け物には名前もないし、見分けのつかないものだ。それは共産党の精神であり、革命戦士たちの怨霊ともいえるもので、中国共産党の指導者たち自身もそれを恐れている。

●そもそもそれには名前がつけられないものであるため、それにたいして何かを語りかけることもできなければ、それを合理的にとらえることもできない。できることといえば、それを恐れることくらいなのだ。

●この党体制は恐怖によって成り立っている。ところが党自身は中国の人民を最も恐れているのだ。だからこそ、声をあげようとするものにたいして検閲をして処罰するのである。

共産党のつくりだした化け物は、西洋社会に恐怖を与え始めている。それは世界経済にとっての唯一の希望(と西側が考える)をコントロールしているのだ。よって、それにたいして融和しなければならないことになる。

●ところが西側諸国の政府や大企業は検閲や、作家、思想家、そして人権にたいする抑圧を批判しているのだ。

●このような二重規範共産党にとって好都合なことだ。西側諸国を自らのルール、つまり偽善という最初の原則に従わせ、誰にも同様な罪を抱えさせることによって、権力を握るどの人間にとっても都合のよいものになるからだ。

●そして世界は中国にその支配を許そうとしている。これは中国で古くから行われている巧妙な政治工作である。中国共産党にとって、中国の優越状態というのは当然のことなのだ。

●たしかに産業革命のような「一時的な状況の悪化」はあったが、それでも優越状態は彼らにとってはそれ以前の状態への回帰でしかない。つまり、中国は文明社会の正当なリーダーだということなのだ。

●数世紀前に周辺の柵封国家が行ったように、世界の国々は中国が扱いをよくしてくれることを期待して北京に貢物を送りはじめている。そして共産党側もそれを自分たちの立場が強くなった証拠として受け取っており、朝貢してくる側の立場を弱いものとして扱っているのだが、それと同時に外国の政府や企業は、中国のマーケットへのアクセスや、中国側が自国やその企業に投資してくれることを歓迎している。

●ところが彼らは、中国のマーケットが中国人のためのものであり、しかもその人々のための利益のために存在するという事実を忘れているか、無視しているのだ。

●11月初旬に行われたAPECの会議では、中国の検閲のやり方やそれへの対抗のしかた、そして西側政府がどのように対処すればよいのかということをすべて物語っている瞬間が、最後の記者会見の時に訪れた。

●それは、NYタイムズ紙のジャーナリストが習近平主席にたいして外国人記者が中国入国のためのビザ発行について質問をした時のことである。NYタイムズ紙は北京政府高官の汚職問題を記事にしてからというもの、ビザの発行で苦労していたからだ。ブルームバーグ社も同じ問題でその立場を「再考」している。

習近平はその質問を完全に無視したのだが、隣に立っていたオバマ大統領はその質問をしたNYタイムズの記者にたいして肩をすぼめながら「しょうがないね」という表情をして微笑んでみせたのだ。

●われわれはこれがとるに足らない行為であり、中国側の姿勢を受け入れたというサインではないことを願うばかりだ。

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NYタイムズが記者のビザ問題で北京とトラブルを起こしていたのは知ってましたが、この記事の最後にあるように、オバマ大統領までがそれに屈するようなポーズを見せていたというのは知りませんでした。

ルトワックが言っていたように、今後の20年ほどの世界の最大のテーマは、やはり中国がグローバルなマーケットにどこまで組み込まれるかということなのかもしれませんが、それを象徴するようなエピソードです。