厳戒下のウルムチ 駅前など要所に装甲車
産経新聞銃剣付きライフル構え24時間警戒
ウイグルには「客が幸福を運んでくる」という諺(ことわざ)がある。訪問者を大事にもてなすというのは、遊牧民族特有の伝統文化でもあったが、こと、漢族に対してはこの諺は当てはまらなかった。何より漢族はゲストとしてではなく、主人として乗り込んできた。新疆ウイグル自治区は名前こそ、自治区だが実態は漢族支配の地域だ。7年ぶりにウルムチを訪問した。(池永達夫)
新疆ウイグル自治区は新中国になって以来多くの漢民族が流入し、今では人口は1900万人を超える。ウイグル民族はその半分にも満たず、約800万人だ。天山山脈の北麓に開けた区都ウルムチは、シルクロードの要衝として栄えた町で、本来、ウイグル族が作ったオアシスだった。
ウルムチ市は約180万人の人口を擁する都市だ。ウルムチで観光業を営む周浩然氏(35)は「外国人観光客にはウルムチ市民の75%を漢人が占めると説明するが、実際は9割だ」と語る。漢人は役所の要職を占めるとともに、商業や工業などに従事する一方、ウイグル自治区に住むウイグル民族の多くは、農業に従事している。
流れを止めるのは、幹線道路や高速道路でも同じだ。カシュガルから崑崙山脈の麓のホータン(和田)にバスで移動した。バスは高速道路を時速120㌔で飛ばすが、予定以上の時間がかかる。理由は途中で4度、公安の検査が入るためだ。高速道路脇や4車線の中側の2車線の上に公安検査施設を作って、通過車両のチェックが行われるのだ。基本は乗客の工作証を電子機器で読み取ることだが、荷物検査や車両下部を鏡を使ってチェックされたりすることもある。ここで時間をかなり拘束される。高速道路ではなく、拘束道路といいたくなるくらいだ。外国人旅行者も例外に漏れず、パスポートを提示しないといけない。公安はこれで住民の移動状況を把握し、テロ事件などが発生した場合、流入者を割り出す情報を得ることができる。
ウルムチ市内の主要道路では50㍍置きに監視カメラが置かれている。この監視カメラはウルムチだけで合計6万台が設置され、市内での人の動きをほぼ完璧に捉える監視体制を整備した。とりわけ360度回転できる「タカの目」と呼ばれる高性能カメラはウイグル族居住区に集中している。
ネットカフェのコンピューターも監視対象の一つであり、工作証提示を義務付けている理由はここにある。誰かがネットで天安門事件とかダライ・ラマなどと打ち込んだら、即座に摘発できる。さらにサイバー部隊が敵視するターゲットを見いだすと、そのCPにウイルスを送り込むことで攻撃を仕掛け沈黙させる。