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東ティモールに欧米企業が注目 政情安定、潜在力に期待

東ティモールに欧米企業が注目 政情安定、潜在力に期待

ディリ=都留悦史
2016年1月10日04時03分

 インドネシアから2002年に独立した東ティモールが注目を集めている。人口120万人の小国だが、国民の半数近くは15歳以下という市場の可能性と天然資源を持つ潜在力に、欧米企業などが商機を探る。一方で、人材不足から産業の多角化は思うように進まず、21世紀最初の独立国は課題にも直面している。
 首都ディリ近郊の山間部にあるヘラ地区。森を切り開いた土地で、昨年12月上旬、この国で初めてのビール工場の建設が始まった。今年末の稼働をめざす、オランダのビール大手ハイネケンの現地事務所長、ビネイ・マソア氏は「政情が安定し、今後の消費の拡大を期待できる」と話す。
 これまで、石油・ガスの採掘にかかわる企業以外では、外資の進出は目立たなかった。ところが、政府が国家予算の約3割をあてて道路や電力などのインフラ整備を進めると、外資が向ける目線が変わり始めた。
 http://www.asahicom.jp/images/asahicom/hand.png国の安定した財政基盤も、進出企業の安心感につながる。石油・ガスの権益から上がる収入を財務省主導で管理する「石油基金」は、海外から運用のプロを雇い、その残高を05年の設立から10年で約170億ドル(約2兆円)まで増やした。原資は基金に残し、毎年の運用益を国家予算にあてている。その金額は全予算の9割に及ぶ。
 法人税率は10%で、東南アジアでは低い。米国の7年ぶりの実質ゼロ金利解除を受けて、新興国の通貨の価値が相対的に落ちるなか、米ドルを国の通貨にする東ティモールの投資先としての魅力が高まりつつある。ヘルダー・ロペス財務副大臣は「物資の大半が輸入頼み。ドルが強くなれば安く買える。物価の安定にも役立つ」と強調する。
 米大手コーヒーチェーン「スターバックス」は、有機栽培されるアラビカ種と呼ばれる良質なコーヒー豆に目をつけた。95年に地元の生産者組合と手を組み、年約2万トンの生産量の6割を買いつけ、高級豆として世界の店頭で販売する。
 それでも、この国ではコーヒー豆は1キロが約2ドルの廉価品がまだ主流だ。コーヒー農家のアロマ・サントスさん(50)は「生活は苦しいまま」と漏らす。
 農家の自立を支えようと、日本の非政府組織(NGO)のパルシックは、適正価格でコーヒー豆を買い取り、日本向けに年100トン近くを輸出している。現地代表の伊藤淳子さん(41)は「有機栽培のスタイルは崩さずに、生産性を上げたい。販路の拡大が課題」と話す。
■人材流出が課題
 東ティモールは、アジアの最貧国でもある。1日0・88ドル未満で暮らす住民は人口の約4割。人口の約7割が零細農業に従事する。国民に「国を支える人材教育にもっと予算を配分すべきだ」との不満は根強い。
 15歳以下の若者が人口の46%を占めるから、数年先には年平均で3万人以上の新たな労働力が生まれる計算だ。しかし、受け皿となる産業はまだ乏しい。
 現在開発中の油田・ガス田は「2023年までに枯渇する」とされるため、政府は観光や農業、水産業を重点開発分野に掲げる。だが、復興を支援する国際協力機構JICA東ティモール事務所の鵜飼彦行所長は「教育水準が低く、政策を立案し、実行できる人材が少ない」と指摘する。
 旧宗主国ポルトガルの旅券は比較的簡単に取得できるため、政情が不安定だった時期に多くの人材が国外に流出してしまった。こうした人たちからの仕送りが経済活性化につながると考える政府は、国民が複数の旅券を持つことを認めている。シンガポール駐在のドミンゴスサビオ大使によると「首相や外交官も複数の旅券を持つ」という。
 ただ、国づくりの人材は必要だ。最近、国外の大学の出身者や専門性の高い人には、駆けだしの公務員でも月額2千~4千ドルの給与を支払うことになった。最低賃金が月額115ドルの国で、国外にいる有能な人材を好待遇で呼び戻すアイデアだ。日刊紙テンポの前編集主幹のホセ・アントニオ・ベロさん(43)は「公務員に蔓延(まんえん)する縁故主義を断ち切れるかが、成功のカギになる」と注視している。(ディリ=都留悦史)
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 〈東ティモールの独立〉 ポルトガル撤退に伴い1975年に独立を宣言したが、翌年にインドネシアに併合された。99年に国連管理下で行われた住民投票で独立派が圧勝し、2002年に独立した。紛争による破壊をへて復興を進め、30年までの高位中所得国入りを目標に掲げる。公用語はテトゥン語とポルトガル語。