中国、400兆円巨額損失も 米「空売り王」予言 600万人リストラ地獄…
中国経済の先行きに警戒感が強まるなか、5日に全国人民代表大会(全人代=国会)が開幕した。習近平指導部で初めて独自に経済政策「第13次5カ年計画」を策定するが、財政、金融ともに景気対策で打てる手は限られ、企業の過剰債務や銀行の不良債権に欧米の投資家や格付け会社は強い懸念を示す。さらに最大600万人のリストラなど、習指導部が抱える課題は山積している。
財政支出と並ぶ景気対策である金融緩和については、中国人民銀行は1日付で預金準備率の引き下げを行ったが、西濱氏は「過度な緩和は人民元安を招くのでやりにくい。通貨安や資本流出を防ぐために資本規制を導入すべきだという声もあるが、人民元の国際通貨化を強調してきた政権のメンツがまるつぶれになってしまう」と指摘する。財政、金融政策ともに手段が限られ、その効果も不透明のようだ。
地方政府や企業が抱える過剰債務問題への懸念も大きい。米格付け大手ムーディーズ・インベスターズ・サービスは1日、中国の信用格付け見通しを「安定的」から「ネガティブ(弱含み)」に引き下げた。格付けは「Aa3」(ダブルAマイナスに相当)に据え置いたが、引き下げも視野に入れる。政府債務の増大や、資本流出による外貨準備高の減少、構造改革の不透明さなどを理由に挙げた。
ブルームバーグによると、米サブプライム危機を事前に予測し、大もうけしたことで知られ、「空売り王」と呼ばれるヘッジファンドマネジャー、カイル・バス氏は、中国の銀行システムが不良債権で資産10%を失えば、中国の銀行の損失額が約3兆5000億ドル(約400兆円)になると予測した。リーマン・ショック時に米国の銀行が抱えた損失の4倍余りになるという。
「血を流す改革を実現するのは容易ではなく、バッファー(緩衝材)として期待されているのが現代版シルクロード経済圏、『一帯一路』だ。設備リストラができなかった場合に、国内で消化できない鉄鋼やセメントのはけ口を周辺の新興国のインフラ需要に求めるもので、中国発の素材デフレが続くことが予想される。構造改革路線と『一帯一路』のどちらにより大きなウエートがあるのかが、全人代での議論や人事から見えてくる」と予測する。
「不良債権処理を性急にやると景気にマイナスになる。また、製造業中心から内需・サービス中心の経済への移行を目指すとしているが、第3次産業が中国の景気を牽引(けんいん)できるかは疑問だ。中国は市場との対話に失敗していることもあり、難しいかじ取りを迫られている」