中国、日本のバブル崩壊うらやむ? 編集委員 村山宏
- 2016/10/14 6:30
- 日本経済新聞 電子版
どうも中国の景気減速に歯止めがかかったようだ。不動産価格の再上昇で住宅購入者が増え、それが経済全体に波及し始めた。もっとも中国の世論が喜び一辺倒かというと、バブル再燃を憂慮する声は根強い。不動産価格上昇によるコスト増が他産業の成長を圧迫しかねないからだ。日本のバブル崩壊をうらやむ見方すら出ている。
■賃料高騰、外資スーパーの閉店相次ぐ
今回の不動産価格の上昇はもちろん政府が意図したものだ。住宅など不動産価格を抑えるため、様々な規制を敷いていたが、その副作用で景気減速が鮮明となった。不動産価格が下がれば企業の投資は慎重となり、担保割れから金融機関は不良債権が増える。これ以上の景気悪化を食い止めようと、政府は規制を次々に解除してきた。
そのかいあって不動産、特に住宅価格が今年に入って騰勢を強め、販売量も増えた。住宅が売れれば建材だけでなく家具、家電も売れ、経済全体への好循環になる。もっとも従来なら中国メディアは機敏な政策転換として絶賛するだけだったろうが、今回は不動産価格の再上昇に対して批判的な見方が次から次へと発表されている。
先に見たように不動産価格の上昇は他の産業へのコスト増となって跳ね返る。ネット企業であってもオフィスは必要であり、自社物件を持たない小企業は賃料の高騰に苦しみ、資金のない若者の起業を難しくしてしまう。かくして企業という企業がまず先に自社物件を持とうと、本業そっちのけで不動産購入に熱中することになる。
IT(情報技術)産業の業界紙の通信信息報は9月末、「不動産業に資金が吸い込まれるのは産業構造の転換にマイナス」と指摘した。中国は重化学工業を中心とする産業構造からハイテク製造業やサービス産業への転換を目指しているが、資金が不動産に集中しては新産業が金欠に陥りかねない。そんな危機感を示す記事だ。
■「実体経済を守るか、不動産を守るか」