西岡 生島さんがアピールされた原稿は特定失踪者問題調査会のメールニュース
(【調査会NEWS2718】30.4.25)で全文出ていますので参考にしてください。
ここからは訪米を踏まえて今の状況をどう見るか。特に北朝鮮がジョン・ボル
トンさんのことを激しく非難しています。「あんな奴がいるなら米朝協議をやめ
てやるぞ」というような意味の外務第一次官の声明を出したりしています。
今の状況の中で拉致問題をどう考えるかについて島田さんと討論したいと思い
ますが、実は今日、私たちがこの問題について教えてもらっている古森義久さん
がきてくださっています。入り口のところで突然お願いしたんですが、今アメリ
てトランプ大統領が昨日言ったことなどについてお話を聞きたいと思います。宜
しくお願いいたします(拍手)。
◆「13歳のやさしい少女」という言葉にこもる心
古森義久(ジャーナリスト)
今回の訪米の成果というか総括みたいなことをまずご報告します。同じ日本人
が外国政府によって拉致されて40年、昼も夜も辛い思いをしている。これは日
本人にとって国民的課題だと思います。悲願とも言うべきものです。また日本に
とって国家的課題だとも思います。主権国家は国民の命と暮らしを守らなければ
ならない。しかもその国が民主的であればあるほど、国民によって作られた国家
なんだからなおさらやらなければならないということで、国家的課題です。国家
的責務と言えるかもしれない。
今起きている状況というのは、日本人拉致事件の解決というのは、ついに国際
的な課題にもなったということだと思います。なぜそうかと言えば、家族会、救
う会、拉致議連の方々が国際的なアピールを続け、ついにトランプ政権が非常に
強い支持を与えるようになったということなんです。
接触はまだなかったということです。
その時点で私のワシントン駐在は長かったのですが、国民としてお手伝いをさ
せていただいた。時のブッシュ政権のどういう人にどう会えば、どんな効率が得
られるかというようなことをお話させていただいた。
その時の状況を思えば、日本の中でも官民ともに問題に対する対応が十分では
なかった。その前には家族会の方々は、誹謗され、無視され、非常に苦しい思い
で、日本の権力・勢力の扱いを受けてきた。
るので、意外で、驚いたということがありました。それからちょうど1年後、2
「悪の枢軸」だと断定した。
これを当時の総書記の金正日が圧力に感じて、日本人5人を返した。やはりア
メリカの動きというのが大きいわけです。そのアメリカが今、日本人拉致につい
てかつてない真剣さで国際的に取り上げて解決しようとしている。
「心が入っている」と報告された方がいらっしゃいましたが、私がそう思った
のは、細かい点でしたが、去年の9月トランプ大統領が国連で演説した時に、横
田めぐみさんに触れて、日本語で言うと、「13歳のやさしい少女」と言った。
日本ではやさしいとかかわいらしいと訳されていますが、「sweet」という言葉
を使ったんです。
「sweet」というのは甘いという意味から始まって、やさしい、かわいらしい、
思いやりがあるという意味です。これは政治指導者が公の場で使う言葉ではない
んです。むしろ普通の人間が自然な気持ちを表す時に使う言葉が「sweet」だと
私は思っており、この言葉が胸に残ったんです。
ですからトランプ大統領の演説の下書きを準備した側近の心に、私は「sweet」
という言葉があったのだろうと感じました。
◆かつてない好機だが、米朝決裂、「解決済み」を繰り返す等に備えを
今回の訪米には色々な意味があったんですが、提起されなかったことについて
1つ上げると、今のトランプ政権には以前から日本側の努力にずっと理解し、共
鳴してくれた有力な人物たちがいるということです。
例えば、これから皆さんが連日のようにテレビや新聞でその名前を聞くことに
いたんですが、日本からの家族会の代表団が行くと必ずあってくれる。そして熱
心に聴いてくれる。
例えば増元さんとか飯塚さん、そして西岡さん、島田さんは何回も会っている。
非常に前向きな対応を示している。
もう一人。上院議員を長年勤めた人で、サム・ブラウンバックという人がいま
す。10年くらい前に、上院の外交委員会という非常に重要な委員会の中の、東
アジア・太平洋小委員会というのがあって、その委員長でした。
この人が日本人拉致問題を非常に熱心に取り上げてくれた。それだけでなく、
訪米団が行くと、すごく熱心に世話をしてくれて、上院議員の事務所というのは
重要な所なんですが、そこを訪米団に自由に使ってくださいと。また記者会見が
必要であれば、私が記者会見の場を作ります、と。この人物が上院議員をやめて、
る。大変心強い人です。
西岡 今回は5月4日の11時半に会いました。
れば、正面から日本人拉致問題を取り上げ、解決を求めると思います。その時帰
国を求めると約束しています。
度合いという点でも、かつてない解決への好機、チャンスを迎えたということで
す。
ただし、この問題を見てきた人間として2つ提起したいんですが、みなさんが
おっしゃっているように日本人拉致問題は日本が解決しなければいけない。これ
は当然です。
例えば、トランプ・金正恩会談が開かれないという事態になった時どうするか。
あるいは開かれても、そしてトランプさんがはっきりと日本人拉致問題の帰国を
言う場合ですが、こういう時日本としてどうするか。これは当然考えておかなけ
ればならないシナリオだと思います。
◆日本の中で「拉致はなかった」という人がまた出てくる
第2点目は、拉致問題というのが、過去からの日本のゆがみを映し出してきた
ということです。反省です。皆さん苦労されてきている。行方不明となった愛す
る家族が間違いなく北朝鮮に連れて行かれたことが明確になった時点でも、はっきり言って、自民党も外務相もそれを認めようとしなかった。金正日よりもっとひどいのはマスコミだったかもしれない。学者や文化人は、「そんなものはない」とずっと言っていた。
変だったと言う。こういうことが日本であったということです。
国際社会に対する日本の対応について、またそういうものが出てきそうなこと
が体質としてあるわけです。これは拉致問題を考える時、絶対知っておかなけれ
ばならないことだと思います。
◆北朝鮮の「悪魔のパターン」
次に今の状況ですが、北朝鮮がこういう時どういう言動をとるか。一種のパター
た人です。
いています。この中で彼が言っているのは2つ。奇しくも今の状況に当てはまる
なと思いますが、1つは、彼が言う「悪魔のパターン」というのがあって、北朝
鮮は交渉する相手に対してまず楽観させる。その次に、「えっ」というようなこ
とをやって幻滅させる。そこからずるずると時間をかけて失望させる。そしてや
がては、もっといいことがあるんじゃないかなと思わせて楽観させる。
楽観→幻滅→失望→楽観を繰り返すそうです。今は楽観か、もしかしたら幻滅
に変わる最初の頃かもしれない。
もう一つの手口は、北朝鮮は大きな公式の会談があるぞというと、必ずその直
前のプロセスで色々な工作をして、自分たちに有利な状況を獲得しようとする。
事前工作の謀略です。
例えば今のマスコミの報道を見ても、「米朝関係筋」とか、正体不明の情報源
方式で行うことに同意した」という情報を流す。
ところが何日かするとすれとまた違うことが出てくる。揺さぶりが大きくなる。
我々が気をつけなければならないことがたくさんあるんですが、一つは言葉の使
い方の操作が上手です。
彼らが言うところの、「朝鮮半島の非核化」、これを受け入れたと南北首脳会
核の全廃に合意したのかというと、それは違うんです。
配備していた時期があります。それよりもっと大きな要素として、アメリカと韓
軍事衝突に持ち込まれるような状態、あるいは相手が「核兵器を使うぞ」と威嚇
抑止」と言っています。核の傘です。
実は日本も核の傘に一応入っているんです。これが本当に危険な時に、本当に
機能するのかということが別の議論としてあるんですが、米韓同盟があって、在
韓米軍があり、最悪の場合にはアメリカの核が使われる。
う時は、米韓同盟における在韓米軍の核抑止、これを廃止すべきと言ってきてい
る。これは当然アメリカとしては受け入れられない。
◆北朝鮮の体制は保障するとトランプ大統領
さんが出てきて、「リビア方式」の核廃棄と言っています。2003年に、リビ
を開発しようとしていた。この時アメリカはそれを止めたんですね。
です。「リビア方式」というのは、まず国内のどこに行ってもかまわないという
査察と検証です。リビアはまだ最終的な核開発の段階までいっていなかったんで
すが、その寸前にあった。それに関する施設や機材、技術者まで全部押さえて、
テネシー州の軍事研究所に持っていって、そこで研究した上で破壊、破棄をした。
れに対して北朝鮮が反発したわけです。トランプさんが出てきて、必ずしも適用
しないと言った。
テロでやられた。自分の国の国民につかまって殺された。だから体制保障じゃな
かったんです。核兵器を放棄した後体制が崩壊した。
しますよ」と。生き残りを保証する、と。だから本当の意味で「リビア方式」で
はないと言った。
謀なことを言っているという印象を全世界に広めようとしている。できればボル
トンを失脚させるところまで持っていきたいと必死になっているわけです。
もしかするとボルトンとトランプが組んで、片方は厳しいことを言い、片方は
いやいやそうでもないんだよ、と言っているのかもしれない。
談に前のめりになっている」と書いた。前のめりになっているのは金正恩なんで
す。会談を求めてきたのは金正恩だということは、あまりにも明白な事実です。
◆アメリカが怖いから出てきた北朝鮮
める」等と言っていた。国際社会から悪魔のように見られていた人が、一夜にし
て平和の天使みたいになってしまった。
これはアメリカの官民ともに信用していません。今までの言動パターンを見た
らこれは信じられない。
ではなぜ首脳会談をしたいというところまで折れてきたのか。これを一言で説
恐れる。このままだと経済制裁で国家が生きていけなくなり、軍事攻撃で自分も
抹殺される。その恐怖から米朝会談を提案した、と。ですから前のめりになって
いるのは金正恩なんです。
こうした駆け引きが行われているところで、北朝鮮は色々なことをやるけれど
ろんそれは分かりません。金正恩の心の中は読めないから。どうなってもおかし
くないぐらいに思っていればいい。
ただ、我々はアメリカの同盟国として、トランプ政権の方針が揺らがないで明
ない。そのためには軍事手段を含むあらゆる手段でそれを阻止する。ただ、軍事
的手段はできるだけ使いたくない。それを避けるためには経済制裁をこれからも
どんどん強めていく。しかし、最後の手段として軍事攻撃というのはあり得るん
だということです。
ながらも、「非核化しますよ」と言った。そうしたらその段階でアメリカが経済
制裁を緩める。あるいは外交承認をする。体制の保証をすると言って段階的にギ
ブ・アンド・テイクでやっていく。
日本の一部の専門家も言っていますが、核兵器は出口放棄です。「非核化しま
すよ」と言ってるだけで、実際そういう行動をとらない。色々なやりとりをして
いいんだということです。
これは一見もっともらしく見えるけれども2つの要素がある。つまり非常に危
政権は出口論は絶対認めない。認めないという決意を揺るがさないからこそ北朝
鮮が今出てきている。そしてトランプさんは罵りに近い言い方で、「前の大統領
は全然だめだった。俺は違うやり方をする」と。
そしてトランプ政権の存立の基盤に関わるような、「ここまでは許容するけれ
どもこれ以上は絶対しない」という線があって、今の北朝鮮が日本の世論も含め
て国際社会に訴えようとしている北朝鮮の言動、方針とは違うものがあるわけで、
絶対に許容しない、と。そんな感じです。
トランプさんが言っていることは簡単です。「もし、私が望むことを金正恩が
しないんだったら途中で席を立つ」ということです。以上です(拍手)。
西岡 ありがとうございました。よかったら、このまま討論に参加してください。
(4につづく)
■訪米報告と米朝首脳会談-東京連続集会報告4
らえているか。これは先生方の話、そして拓也さんの話と、そして2001年の
我々の訪米前からアメリカに駐在していて我々をずっとサポートしてくださった
立場からの話と一致しています。ここまで来たと思っています。
の専門家、島田さんがいますので、短めに、今後どうなるかではなく、今のトラ
ンプ政権の拉致問題に対する姿勢について、付け加えることがあればお願いしま
す。
◆「安倍が納得する形で拉致問題を解決しろ」と北に言ってほしい
を絶対に米朝首脳会談の場で持ち出すということです。
我々もアメリカで言ったんですが、トランプ氏に細かい情報を入れて、「これ
を言ってくれ」といっても、彼が覚えるはずはないですし(笑)、アメリカ大統領
は忙しいですから、うっかり間違ったことを言われても困るので、「トランプ氏
に言ってほしいのは、安倍が納得する形で拉致問題を解決しろ」と。「安倍が納
ない」と。それだけ言ってくれれば十分なんです。枠は日朝で詰めるということ
になると思います。短かめに(笑)、簡単に言うと以上です。
◆「生きている」ことを前提に話したポ上級部長
西岡 今の話を補足すると、先ほどから議員の先生も拓也さんも言っているのは、
「すべての拉致被害者の即時一括帰国が我々の要求だ」ということで、そう言っ
てきたんですが、それが本当に日本政府の要求になっているのか。
今島田さんは、「安倍が納得するようにやってくれ」と言いましたが、安倍さ
んは我々と同じことを言っているかどうか。とにかく調べてみました。そうした
ら、我々は安倍さんに謝らなければいけないんですが、4月22日の国民大集会
より前に、安倍さんの方が先に言っていました。
私は4月22日に、「すべての拉致被害者の即時一括帰国」、これがキーワー
ドですよと壇上でどなったんですが、実はその前のフロリダでの日米首脳会談の
記者会見で、「すべての被害者の即時帰国がなされなければならない」と言って
いるんです。
「一括」が入っていないので我々の方が少し厳しいと言えるかもしれませんが、
「すべての被害者の即時帰国がなされなければならない」ということをフロリダ
で言い始めて、国会答弁でも言っていますし、国民大集会でもおっしゃいました。
最近ではフジテレビにかなり長い時間出ておっしゃっています。ぶれてないんで
す。我々と同じことを言っている。
だから今回の訪米で我々が言ったことは、島田さんの要約で正しいわけです。
「総理が満足するようにトランプ政権はやってくれ」と。同じことを言った。
SCに行って、ポッティンジャー上級部長に会いました。私たちはどこに行って
も、「即時一括帰国」を言ってきましたし、アピール文にも書いて行ったんです。
そこで機会があったらそれを言おうと思っていたんですが、ポッティンジャー
さんは会ってすぐ、向こうから先に、「5人は帰ってきましたよね。8人はまだ
帰ってきていませんよね。それ以外にもまだ私たちが知らない被害者もいますよ
ね。それらの人たちがすべて帰ってこなければだめですよね」と言ったんです。
向こうから言われたのでもう言うことがなくなって、「これで帰っていいか」
と内心思ったくらいでした。つまり、8人は帰ってこなければなりませんね、と
いうことです。
北朝鮮は8人は「死亡」と言いましたよね。でも日本政府は「死亡」を認めて
いませんよね、という言い方をせず、「帰ってこなければいけませんよね」とい
う言い方は、めぐみさんや八重子さんや、恵子さんやるみ子さんが帰ってこなけ
ればならない、生きているという前提の話です。トランプ大統領としょっちゅう
会っている人がそう言っていた。
◆トランプ体制が強化される布陣に
島田 ポッティンジャー氏に西岡さんたちが会っていた時、私は国務省でスーザ
ン・ソーントンという国務次官補(アジア担当責任者)に指名されてまだ上院で
承認されていない人と、その上司である次官と会ったのですが、ソーントンさん
は国務省生え抜きの官僚で親中的かつ宥和的ではないかと言う人が多い。
現にマーク・ルビオ上院議員がソーントンは承認しないという趣旨のことを言っ
ており、共和党からそういう造反が出ているので承認されないでしょう。代わり
にポッティンジャーを国務次官補にするという話が今出ていて、そうなると国務
省にも我々の同志が次官補という極めて重要なポストで入っる。
またボルトン氏の最側近で、今人事が微妙なところにあるので名前は言いませ
入ります。そうなるとさらに体制が強化されると思っています。
◆北朝鮮の独裁者が決断しない限り帰ってこれない
西岡 ということを確認してきたということで、アメリカが核・ミサイル問題だ
けではなく、拉致問題も自分の問題として取り上げるのは間違いない。残念なが
らボルトン補佐官には会えませんでしたが、ポッティンジャーさんが伝えてくれ
たボルトンさんの話として、「補佐官はこの問題は日本に頼まれる必要はない。
頼まれてやることではなく、アメリカの問題だといつも言っています」と言って
いることを伝えてくれました。
そこまで来たということです。それを前提として、あと少し話をしたいと思い
いう決断をしたという兆候はありません。逆に彼らは最近声明を出して、「拉致
問題は解決済」と言いました。これも現実です。
我々は、最後は平壌を動かさなければなりません。そのために我々は圧力をか
け、アメリカは軍事的な圧力をかけて協力し、さまざまなことをやってきました
裁者が決断しない限り帰ってこれないんです。その独裁者が決断したという兆候
はまだない。ということで、今後どうなっていくのか。
◆核・ミサイルで厳しく責めると、先に拉致で交渉してくる
被害者家族にお金を払うということを同時にやったのですが、当時リビアとの交
渉を途中から担当したNSCのロバート・ジョゼフという人にも、他の人がニュー
ヨークに行っている間に私はワシントンに残り、私とスーザン・古森さんとで会
いに行って経緯を聞きました。
西岡 この人はとても重要な人です。ロバート・ジョゼフという人が実はリビア
に対して核放棄交渉をやった人です。リビア方式を知りたいならロバート・ジョ
ゼフさんのところに行かなければならないのに、島田さんはそういうことを知っ
ていたから会いに行ったのですが、ジョゼフさんは「俺のところに来なければな
らないのに外国人で来たのは島田だけだ」ということで、これから聞ける話はな
かなか日本では聞けない話なのでお願いします。
島田 その「リビア方式」について今発売中の「月刊正論」に書いたのですが、
さらにその倍の分量で、ジョゼフから聞いた話も含めて1週間後に発売される
「月刊Hanada」に書きました。
リビアは最後まで、核・ミサイルの問題は粘って、ごまかして、放棄せずにす
むように小細工を弄しました。そしてテロの清算に先に応じてきた。ここがポイ
ントで、やはりテロの清算の方が解決が楽なんです。
島田 270人が亡くなりました。従って核・ミサイル問題で厳しく北朝鮮を追