複合機、中国国内での設計・製造要求…日米「事実上の技術強制移転だ」強く懸念
外国オフィス機器メーカーに中国国内での設計・開発を求める新規制についての国家規格を記した草案
中国政府が、日本を含めた外国オフィス機器メーカーに対し、複合機などの設計や製造の全工程を中国内で行うよう定める新たな規制を導入する方針であることがわかった。条件を満たさない機器は政府や各省、公的企業の入札から排除されるとみられる。現地での設計・開発を余儀なくされれば基幹技術が中国側に流出しかねず、日米の企業・政府レベルでは「事実上の技術強制移転だ」と強い懸念が出ている。 【図表】ひと目でわかる…中国のオフィス新規制で予想される、今後の流れ
政府機関の国家市場監督管理総局が「情報セキュリティー技術オフィス設備安全規範」の名称で策定を進めているもので、政府調達などの入札を認めるための新たな規格となりうる。
本紙が入手した同規範の草案は、政府などが入札で購入するオフィス設備について「(中国)国内で設計、開発、生産を完成すべきだ」と明記している。オフィス設備の安全評価についても「中国国内で設計、生産が完成されていることを証明できるかどうかを検査する」と規定している。
対象となるオフィス設備としては「主に印刷、スキャン、ファクス、コピーの一つ以上の機能を持つ機器」と具体的に例示している。新規格は、通信、交通、金融などの重要インフラ(社会基盤)を運営する事業体の調達にも適用される。
特に、オフィス設備を構成する「重要部品」として、「メイン制御チップ、レーザースキャン部品、コンデンサー、電気抵抗器、モーター」を列挙し、中国国内で設計、製造するように強調している。複合機の中枢を構成する部品には機微技術が集中しており、軍事転用可能な技術も含まれる。
新規格は「推奨」の性格を持ち、日本産業規格(JIS)に相当する。在中国の日系企業でつくる「中国日本商会」は昨年まとめた白書で、中国の「推奨」について「法令法規で引用されることにより強制化している懸念がある」との認識を示しており、実態上は強制に近いとみられている。
現在、日米などのメーカーは、設計や開発は自国で、製造や組み立ては中国国内の工場でそれぞれ行い、「中国産」として製品化しているケースが多い。設計や開発は企業にとって最も重要なノウハウが集中するため、企業秘密の国外流出を防ぐ目的からだ。新規格が導入されれば、各企業はこうした手法の抜本的な見直しを迫られることになる。
メーカー関係者は「中国国内で設計、開発もすれば、その過程で技術がとられる可能性は高い。すぐに中国メーカーに模倣され、我々の競争力は失われる」と危機感を示している。