ダライ・ラマ訪問という外交リスク
9月初め、南アフリカ政府はチベット仏教の最高指導者ダライ・ラマへのビザの発給を拒否した。ダライ・ラマは、ケープタウンで10月13日から開催される「ノーベル平和賞受賞者世界サミット」に出席する予定だった。南アがビザを出さなかったのは、同国が経済的なつながりを強めている中国の顔色をうかがったためといわれる。中国政府にとって、チベット自治区独立運動のシンボルのような存在のダライ・ラマは、目の上のたんこぶだ。
ダライ・ラマ14世の穏やかな表情を見たら、誰もが心に安らぎを感じるだろう。でも、もしあなたが一国の大統領や首相、あるいは外務大臣だったら、彼の顔は頭痛のタネでしかない。
9月初め、南アフリカ政府はチベット仏教の最高指導者ダライ・ラマへのビザの発給を拒否した。ダライ・ラマは、ケープタウンで10月13日から開催される「ノーベル平和賞受賞者世界サミット」に出席する予定だった。南アがビザを出さなかったのは、同国が経済的なつながりを強めている中国の顔色をうかがったためといわれる。中国政府にとって、チベット自治区独立運動のシンボルのような存在のダライ・ラマは、目の上のたんこぶだ。
寛容の国ノルウェーまで
12年5月、デービッド・キャメロン首相は中国政府からの警告に反して、ダライ・ラマと会談。怒った中国は要人の訪英を中止するなどして、関係は冷え込んだ。英政府は1年かけて、ようやく中国をなだめることができた。ご機嫌取りに奔走した1人、ウィリアム・ヘイグ外相はこう言った。英政府は「チベットの問題は慎重に扱うべきだということを重々承知している。(今後は)中国の懸念に敬意を払いながら適切に対処する」。
寛容と福祉の国で知られるノルウェーさえ、ダライ・ラマを避けている。ダライ・ラマは今年5月にノルウェーを訪問したが、政府高官たちは彼との面会を拒んだ。理由は、10年に獄中の民主活動家、劉暁波(リウ・シアオポー)にノーベル平和賞が授与された際、中国から受けた「報復」を覚えていたからだ。
この苦い経験から、ノルウェー政府は同じ轍は踏まないと決意したようだ。エルナ・ソルベルグ首相は、中国との関係を重視してダライ・ラマと面会しなかったと公言。「中国政府が会うなと言ったわけではない。ただ私たちは、もし彼と会えばもっと長く『冷凍庫』に入れられたままになることを知っている」と語った。