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スマホは必携 「21世紀型難民」の道案内役


スマホは必携 「21世紀型難民」の道案内役

ニューヨーク・タイムズ・ニュースサービス
2015年9月9日17時25分

http://www.asahicom.jp/articles/images/AS20150907003108_commL.jpgベオグラードからの列車の中で、スマートフォンを使ってハンガリー国境までの距離をチェックするシリア難民(8月31日、AP)
 新天地を目指す何万もの人々がバルカン半島に押し寄せている。戦争で母国を追われた大量の難民同然に、食糧、水、そして避難所が必要だ。加えてもう一つ、彼らがこれ無しでは生き延びられないと断言するモノがある。スマートフォンの充電所だ。
 「行く先々の国で、(スマホを使うための)SIMカードを買い、ネットに接続して地図をダウンロードする。自分がどこにいるのか、位置を調べるためだ」とオサマ・アルハセム(32)はいう。音楽教師だった彼は、シリアのデイルアルズール州から、ここセルビア共和国の首都ベオグラードに逃れてきた。欧州の北部へ行くための方策を探っている。
 「スマホが無ければ目的地にたどり着けない。だから、バッテリーの残量が少なくなり始めるとストレスを感じてしまう」
 テクノロジーが今回の難民危機の態様を変えた。人々を動きやすくしただけではない。国際移動が成功したルートへと、人々を駆り立てている。バルカン半島を経由するルートもその一つだ。国連によると、最近ではギリシャから国境を越えてマケドニアに流れ込む人が1日ざっと3千人を数える。
 現代の国際移動では、人々にとってスマホで入手する地図、自分がいる位置を知るGPS(全地球測位システム)のアプリ、ソーシャルメディアは不可欠のツールである。移動ルート上の現在地を確認し、取り締まりの状況や国境警備の動き、交通手段、滞在地と物価などをリアルタイムで知ることができる。同時に、家族や友人との連絡を保てる。
 トルコからギリシャへの海上ルートをうまく渡り切った人たちが何より先にやるのは、スマホを取り出して愛する人へメッセージを送ること。
 こうしたテクノロジー化の背景に、内戦を逃れたシリア人のうち何万もの人々が中産階級出身だという事情がある。
 密航を手引きする仲介業者は正規の旅行会社を装って、フェイスブックに目的地の魅力的な写真や割安サービスなどを添えた広告を載せている。欧州行きを仲介するアラビア語フェイスブック・グループには、5歳以下の子どもを対象にした代金50%引きプランが提供されている。ちなみに、トルコのイスタンブールから陸路でギリシャテッサロニキへ行く仲介料は、車代など込みで1700ユーロ(約1900ドル)だ。
 「人々は独自に移動するようになってきたので、密航の仲介業者は商売が減っている。フェイスブックのおかげだ」とモハメド・ハジ・アリ(38)はいう。移民の主な通過地の一つのベオグラードにある国際人道支援団体「アドベンチスト開発救済協会(ADRA)」で働いている。シリア出身の彼は3年前からベオグラードで暮らし、移民たちの話に耳を傾けながら彼らの手助けをしてきた。アリによると、セルビアを経由する移民の多くは、初めのころは密航の仲介業者に頼っていた。しかし、何万人もが国際移動を経験した後は、彼らの体験情報がソーシャルメディアで共有できるようになった。移動ルート上の滞在地点もGPSで逐一正確に表示され、それがスマホで自動的に記録されている。
 だから、アリの話だと、密航業者の仲介料は紛争が始まった当初と比べると現在は半額ぐらいにまで下がっている。移民の大半が依然として業者にカネを払っている場所はトルコからギリシャへ渡る区間ぐらいで、それ以外なら、人々はGPS機能が付いたスマホがあれば業者に頼らなくても自力で移動できると思うようになっているという。
 こうした事情の変化に合わせ、国際的な支援機関の対応も変わってきている。
UNHCR国連難民高等弁務官事務所)はヨルダンに逃れたシリア人難民を対象に、これまでに計3万3千枚のSIMカードを配布した。また、太陽光を利用して携帯電話を充電できるソーラーランタンも計8万5704個配った(訳注:以上の数字は、いずれも2015年8月25日現在)。
 難民たちはスマホを使って、お互いに情報を交換し合えるようになったし、かつては一方的に受け取るだけだった国際機関からの情報についても、双方向でやり取りできるようになったのだ。シリアの首都ダマスカスにあるICRC(赤十字国際委員会)事務所の広報担当パウェル・クルジエクは、そう話している。(抄訳)
(Matthew Brunwasser)