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チベット統治50年 7年で焼身自殺123人 「光輝」と「暗黒」の深い溝



2015.9.24 06:00

【日々是世界】チベット統治50年 7年で焼身自殺123人 「光輝」と「暗黒」の深い溝

http://www.sankei.com/images/news/150924/wor1509240002-n1.jpg8日、中国チベット自治区ラサのポタラ宮前広場で開かれた自治区成立50年を記念する式典で、中国国旗を振る参加者ら。式典は完全に中央政府の主導で行われ、光り輝く「新チベット」が強調された(AP)

 チベット自治区の成立から50年を迎え、中国政府は6日に公表した「チベット白書」の中で過去半世紀で成し遂げた経済成長を強調、「チベット史上で最も光り輝く時代を迎えている」と言い放った。だが皮肉なことに経済発展は官僚の腐敗や移住してきた漢族と地元住民との格差という新たな軋轢(あつれき)を生み出し、抑圧的な民族政策をめぐる対立に拍車をかけている。

 米政府系放送局ラジオ自由アジア(RFA)によると、自治区の区都ラサで盛大な記念式典が開かれた前日の7日、近隣の四川省アバ・チベット族チャン族自治州では、チベット仏教最高指導者、ダライ・ラマ14世(80)の写真を掲げて「自由」を求めデモ行進した19歳の僧侶らが地元警察に連行された。8月には甘粛省で50代の女性が抑圧政策に抗議して焼身自殺。2009年以降の自治区周辺での焼身自殺者は123人に上る。

 こうした抑圧政策への反発を抑え込む特効薬として中国政府が最重視するのが経済発展だ。国営新華社通信によると、国務院(政府)新聞弁公室が6日に発表した「チベットでの民族自治制度の成功実践」白書は、チベットの域内総生産が過去50年で280倍以上に増加し「社会に天地を覆すような変化が起きた」と統治の成果を誇示。習近平国家主席(62)は8月に開いたチベットの管理に関する会議では「生活水準を絶えず向上させなければならない」と強調した。

 しかしRFAによれば、中国の民族問題研究者、王力雄氏(62)は「経済発展と生活の改善は、決してチベット人の政府支持にはつながっていない」と分析。自治区の住民も「経済は確実に発展してきたが住民の不満はむしろ高まっている」と語っている。
利益は漢族官僚の手に

 その背景には、中国社会全体が抱える病巣がある。米国在住の中国民主活動家、楊建利氏(52)はRFAに「チベット経済の発展は一般の庶民に恩恵を与えていない。内地と同様に官僚が統治する経済であり、利益はみな彼らの友人や親族が手にする」と指摘。権力を持つ公務員の腐敗がチベットでも拡大しており「習主席は官僚の道徳水準を向上させることで統治の効率を上げようとしているが、基本はこれまで失敗してきたチベット政策の継続であり、問題はより複雑になるだろう」と予言している。

 「チベット中国共産党の指導の下、立ち遅れから進歩、貧困から富裕へと向かった」(チベット白書)との“歴史観”も住民に浸透しているとは言い難い。米政府系放送ボイス・オブ・アメリカによると、国際人権団体アムネスティ・インターナショナル東アジア担当のニコラ・ベクイリン氏は今回の記念式典にあたり「中国にとってチベットにおける主権を強調する重要な機会だったが、多くの住民は中国に占領されていると認識している」と言及した。

「恥知らずの厚かましさ」
 インド北部ダラムサラに拠点を置くチベット亡命政府ペンパ・ツェリン議長はこう語っている。「中国政府は自治区成立50年を祝賀しているが、チベットの歴史の中で最も暗黒の50年だった」

 今年はチベット自治区成立50年と同時に、ダライ・ラマ14世が80歳の誕生日を迎えた節目でもある。米国の半官半民の人権擁護団体「全米民主主義基金」のカール・ガーシュマン会長(72)は7月6日のダライ・ラマの誕生日にあたって米ワシントン・ポスト紙に寄稿し「中国政府は対話を拒否し、過酷な抑圧政策と強制的な(漢族への)同化政策チベットの信仰と言語、ナショナル・アイデンティティーの計画的な破壊を選択した」と批判した。

 ダライ・ラマは中国政府による介入を懸念し伝統的な後継者選びである活仏の転生制度を自らの死後は廃止すべきだとの考えを表明している。これに対し中国の高官が3月、チベット仏教や継承制度への裏切り」などと非難したことについて、ガーシュマン氏は「無神論の党による恥知らずの厚かましさ」と口を極めて非難。ダライ・ラマの誕生日にあたり、「チベットの人々の苦難を思い起こし、それが終わることを祈ろう」と結んだ。(国際アナリスト EX)

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