http://img.epochtimes.com/i6/1511160729251657--ss1.jpg 『墓碑』の表紙(ネット写真)
著名ジャーナリストに渡航禁止命令 授賞式出席を阻むため=中国
1958年から1961年の3年間にわたって中国で展開された「大躍進政策」。その失策によって史上最悪の大飢饉が中国全土を襲い、数千万人の餓死者を出した。この大躍進について綿密に取材を重ね、当時の様子を詳細に掘り起こしたルポタージュ『墓碑』(邦題『毛沢東大躍進秘録』文藝春秋社)の著者で元ジャーナリスト、楊継縄氏が当局から出国を禁止された。このたび同氏に授与された賞の授与式への出席を阻むための措置とみられる。
米ハーバード大学ニーマンジャーナリズム財団では毎年、「良心的かつ誠実な報道をした個人、グループまたは組織」に対して、ルイス・M・リオン賞を授与しており、今年は恐怖に屈しない報道姿勢を貫いたとして楊氏が受賞したが、同氏が授賞式に出席できるめどはたっていない。ニューヨーク・タイムズ紙の取材に対して同氏自身が、以前の勤務先でもある中国最大の政府系報道機関・新華社通信から、受賞のための出国を禁止されたと明かしている。
『墓碑』は、同氏が大躍進政策に翻弄された人々の証言を集め、15年の歳月をかけて完成したドキュメンタリー。大躍進政策とは当時の最高指導者、毛沢東が挙国一致で行った工業・農業の大増産計画で、数年間で欧米諸国を追い越すことを想定していたが、結果は中国経済の大混乱、土地の荒廃などを引き起こして大失敗に終わり、推定3600万人もの餓死者を出した。
ニーマンジャーナリズム財団は世界のジャーナリズムの向上とリーダーの育成を活動理念に掲げており、ホームページで楊氏の受賞について「彼の仕事は、多くの障害に直面しながらも取材を続けている全ての世界的なジャーナリストの努力に対して訴えかけるものだ」とコメントし、「事件の真実が、まるで法医学報告書のように詳細に記録されている」と本書を賞した。
広東省広州市の古い街並。参考写真(kevinpoh/flickr)
3600万人が死亡 隠された「大飢饉」暴いた中国人作家、国際賞を受賞
1960年ごろ、中国で起きた「大飢饉(ききん)」の実態を暴いた作家・楊継縄氏が、勇気あるジャーナリズム精神を称えられ、「スティーグ・ラーソン」賞を受賞した。楊氏は受賞式典でも、中国共産党が政策の失敗を隠ぺいし続けていると指摘し、悲惨な当時の状況を改めて語った。
さらに、人々を「人食い」にまで走らせた、当時の悲惨な状況を語った。「戦争や疫病もなく、気象条件も平年並みの時期に、独裁政権の恐怖政治とあやまった経済政策で、数千万人もの中国人が餓死した。人々は山菜や樹木の皮を食べつくし、鳥の糞、ネズミ、綿、泥だけでなく、死体や難民、自分の身内までも食料とした」「人は極度の飢餓状態に陥ると、生存本能のために人間性を失い、道徳や人格を構わず、手段を選べずに食べ物を探す。その結果、人が人を食すという結果を招いた」「全国では人食いの記録が数千例に達した」。
式典の最後に、楊氏はこの大飢饉という暗黒の歴史から中国の未来を案じ、次のように述べた。「大飢饉という悲惨な歴史を記録することは、民族の暗い過去を忘れないようにするためだ。歴史と真っ向から向き合えない民族に、未来はない。人は美しい記憶だけでなく、自分の犯した罪や悲しい記憶も忘れてはならない。人為的に、人災や罪悪のような暗い記憶を消そうとすると、そのうちもっと暗い闇にはまるだろう。私がこの歴史を記録する目的は、2度とこのような事が起きないようにするためだ」。