パルデンの会

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イギリスの今回の「国民投票」こそ、これから私たちが学ぶべきことである。憲法改正は国民投票でなされる



勝谷誠彦の××な日々。 より転載

 2016年6月25日号。

<イギリスの決断。日本の大マスコミがどこも書かない私の見方である>。



 3時半起床。尼崎市の自宅。
 うわあああ。やらかしてくれたなあ。
しばしば書いていることだが、面白い時代に生きているものである。子どもから若かったころにはなんでこんなに動きのないつまらない時に生きあったのかとおもっていたが、自分の人生が波瀾万丈になったあたりから、世界も面白い、面白い。イギリスがやらかした。私が咄嗟に連想したのが大東亜戦争の前の松岡洋右の「連盟よさらば」だ。
 「帝国主義の時代がふたたびやってきた」
とはさんざんここで書いていることである。今回のイギリスのEU「脱退」(「離脱」というよりもこの言葉の鋭さの方が私は好きだ)はこれまで私が言ってきた文脈の上で説明できる。ちょっと「エヘン」である。なあなあのチーチーパッパの時代は終わったのだ。
 <英国EU離脱で市場は大荒れ、キャメロン首相「辞任の意向」>
 http://www.asahi.com/international/reuters/CRWKCN0Z92OZ.html
 <英国で23日に行われた欧州連合EU
離脱の是非を問う国民投票は、開票が100%終了した時点の得票率が、離脱派が約52%、残留派が約48%となり、離脱派の勝利に終わった。英国の先行き不透明感が強まり、第二次世界大戦後の欧州統合の動きにブレーキがかかった。>
 わくわく、どきどき。
賢明なる日本国の大マスコミの記者様におかれては世界史全体を俯瞰して歴史を語ることがあまりお上手ではないようで、今の報道も一切それが欠落している。欧州だけに目を向けてEUの成立とその後の出来事ばかりが報道されている。しかし世界史は世界があってこそ成り立つものである。この欧州の変動が、世界全体にどう影響していくか。経済についてはいろいろと甲論乙駁だ。いかに今の大マスコミがそこにばかりとらわれているかがわかって、むしろおかしい。
 私たちの歴史は経済のみによって動くものではない。
人類を馬鹿にするものではない。もっと高邁な価値観や哲学がひとのどこかにはあって、それが揺り動かすのである。ちょっと難しくなるけれどもどこも書かないので許していただきたい。そもそもEUの原点は1952年に作られた欧州石炭鉄鋼共同体あった。大切なのはここに仇敵のドイツとフランスが入っていることだ。
 <ヨーロッパ石炭鉄鋼共同体/ECSC>
  http://www.y-history.net/appendix/wh1602-065.html
  <略称ECSC/European Coal and Steel Community/1952年に発足した、フランス・
西ドイツ・イタリア・ベネルクス3国(ベルギー・オランダ・ルクセンブルク)の6ヵ国による、石炭・鉄鋼の生産を共同管理する機関。1950年に発表されたフランス外相シューマンの提唱したシューマンプランに同意した6ヵ国が、1951年4月に条約を締結し、52年にこの機関が発足した。理事長にはフランスのジャン・モネが就任した。>
 おわかりか。イギリスは入っていないのである。
イギリスがこの後身であるECに加盟したのは実に20年近く後の73年のことであった。欧州大陸はずっと戦争にあけくれてきた。日本の戦国時代を思ってもらえればいい。だからケンカしてもずっとソッポをむいていてはやっていけないのでまた手を握るというツンデレ状態が続いていた。独仏は特にそうだ。だから大戦から間もないのに「もうそろそろいいだろう」とこうして手を結んだのがEUの始まりである。
 それはわからなくもない。しかしイギリスは違う。「大英帝国
なのである。世界の半分を領土と植民地にしてきた国なのである。ヘタレのフランスとは違って、アドルフ・ヒトラーが1359発ものV2をぶちこんでもロンドン市民は耐えたのである。フランスのように「じゃあ仲良くしましょう」とすぐにはいかない。そういうプライドとトラウマが今に至るまでずっとあったと、私は思っているし、先日のロンドンでも感じた。なのになに?メルケルという太っちょのおばさんが欧州の帝王のように振る舞っている。実際に実力があるのだが。大英帝国としてはむかつくところがあっただろう。
 日本で「離脱はない」
と報じられているのをイギリスで私はネットで見ていたが「そうかなあ」と首をひねっていた。パブでの空気はまったく違ったからだ。だから私は手持ちの株をすべてあちらから売った。現金化した。あたりではあった。しかしこんなものは博打なので自慢するのは下品だ。週明けの東京市場のことを考えると戦慄する。ま、ひとごとだけど。わははは、自慢している。
 <米国株、ダウ急反落し610ドル安/金融や素材の下げきつく/
EU離脱で>
 http://www.nikkei.com/article/DGXLASB7IAA05_V20C16A6000000/
 <24日の米株式市場でダウ工業株30種平均は急反落し、
前日比610ドル32セント(3.4%)安の1万7400ドル75セントと3月16日以来ほぼ3カ月ぶりの安値で終えた。英国の国民投票欧州連合EUからの離脱が決まったのを受け、世界経済の不透明感が強まった。投資家が運用リスクを避けて、米株式を売る動きが広がった。
 英国のEU離脱が世界景気の減速や金融市場の混乱につながるとの
警戒感が強まった。アジア、欧州の株式相場が軒並み急落し、米市場でも金融や素材など業績が景気動向に左右されやすい銘柄を中心に売りが出た。>
 そう疎遠ではない安倍晋三首相だが、
さすがに電話をして聞くわけにはいかない。「凄えな」とは感じた。それが彼とその周囲の情報収集能力の高さなのか偶然なのかはわからない。本当はそこを聞きたいのだけれども。「リーマンショックなみの経済の落ち込み」と安倍さんは伊勢志摩サミットで言った。大マスコミは総掛かりで叩いた。
 <「リーマンショック前と似ている」/ 安倍首相の見解に批判の声も>
 http://www.huffingtonpost.jp/2016/05/26/lehman-shock_n_10156996.html
 <G7首脳会議(伊勢志摩サミット)で、安倍首相が「
世界経済はリーマンショックの前と似た状況だ」という認識を示したことが波紋を呼んでいる。
 NHKによると安倍首相は5月26日のサミットの討議で、
世界経済の現状について、データを示しながら、「政策的対応を誤ると危機に陥るリスクがある」と指摘し、リーマンショックの前と似た状況だと訴えた。>
 <首脳の間で見解が一致しているわけではない。
朝日新聞デジタルによると、26日のサミットの昼食会でドイツ首相のメルケル氏は、ワインを傾けながら、安倍首相に冗舌に反論したという。メルケル氏は財政規律を重視する立場であり、リーマン・ショックのときには、各国で協調した危機対応も経験した。会合後、記者団に対してメルケル氏は「世界経済は、そこそこ安定した成長を維持している」と釘を刺した。>
 メルケル首相は今ごろ真っ青になっているであろう。
結果として安倍さんの予言は当たったのである。彼女はまさか本当にイギリスが離脱するとはこの時は予想すらしていなかったのではないか。安倍さんとしてはキャメロン首相が来ている場で離脱の可能性をほのめかすことすらできない。だからリーマンショックを持ちだしたのであって、官邸は離脱についてかなりの確率を考えていたのだと私は想像する。だとすれば情報収集をしていた官僚は優秀だし、消費税の増税の先のばしをした一手もたいしたものだ。いずれも結果論で私のような愚物が言っているのだが。

 もうひとつ。
大マスコミとは違う視点で今回のこの出来事を分析する。日本経済、特にアベノミクスの「第三の矢」にとってはまことに好機ととらえるべきだということだ。さすがは産経新聞ここだけはきちんとそのことを見据えて書いている。
 <世界危機ドミノがいよいよ迫ってきた 轟いた金融体制崩壊連鎖の号砲/編集委員/田村秀男>
 http://www.sankei.com/premium/news/160625/prm1606250032-n1.html
 <日本はどうすべきか。世界有数の安全資産、
日本国債金利マイナスでも買い手が殺到している。おかげで超円高に突き進みかねない。ならばチャンスだ。
 財政資金をマイナス金利国債で調達して、
インフラ整備や人材投資など経済再生に使う。対外金融資産は900兆円以上もある。それをリスクだらけの国際金融市場にまかせるのはばかげている。
 その通り!
ここまでに書かれている英国と癒着する支那の凋落も読んでおいて欲しい。抱き合い心中のように、安全保障面で仲良くなるのはやめてほしいなあ。とまれ、経済である。この調子で円高が進むと日本国は「大金持ち」になる。あなたや、あなたの財産もドル立てではずいぶんと増えるのである。私の欧州行きももう少し待っていればかなり安くなったかも…そういうことを考えてはこんな商売はできない。「直前」に行くのが面白いものを見る機会なのだ。
 記事の紹介に戻るならば、ここに書かれている通り、
対外金融資産を圧倒的に高い円で使って「次の産業」を国内で勃興させるべきである。円高になって輸出が苦しいというが、それらは「古い産業」なのだ。そんなものにいつまでも頼っているからダメなのである。アベノミクスの「第三の矢」がちっとも放たれない。今ことチャンスではないか。シャープが事実上潰れてなんと支那人に買われた。三菱自動車などはあのていたらくだ。タカタも資産を超える賠償をしなくてはいけないだろう。全滅ではないか。なぜ大マスコミはこういうことをつなげて報じないのか。
 もう「これまでの産業」はダメなのである。
であれば次に投資しなくては。オーランチオキトリウムに1兆円投じなさい。あっ、久しぶりに出たと思っているでしょう(笑)。それで日本国が産油国になってタンカーが出る舳先に私は立ちたいと思っている。三宅久之先生も「オーランチキチキか」と言いながら空から見守ってくれるであろう。
 もうひとつ。「欧州における戦後体制の転換」
を私たちは利用しなくてはいけない。もう耐久期限が切れたのだ。アジアにおいては「ヤルタ・ポツダム体制」がまだ続いている。これをもひっくり返さないといけない。それが憲法改正だ。そこまで大きな視点から見た論議参院選でどれほどなされているか。アホ野党は70年前の体制をまだ守ると言っているわけだ。
 どの大マスコミも言わないので私が言う。イギリスの今回の「
国民投票」こそ、これから私たちが学ぶべきことである。憲法改正国民投票でなされる。イギリス人ができたことが、なぜ日本人にはできないのか。それを試してみるということの前になんとか妨害しようとしているのが今の野党であり護憲派である。そして大マスコミである。
 今回のイギリスでの出来事を日本の憲法改正に結びつけた大マスコ
ミがいるか。いない。気がつかれるのが嫌なのだ。総選挙を上回る投票率をイギリスの人々は叩き出した。結果がどうであろうと、それぞれの陣営は必死であった。結果を受けて、首相が辞意を表明した。真剣な民主主義とはこういうものである。さすがは民主主義の祖国だ。
 それにくらべて私たちは恥ずかしくないか。
そこに行く前にわあわあと罵り合って、いや、罵り合ってすらいないな。横に逸れてはくだらない論議をしている。憲法が大切ならば、勝負しようではないか。憲法9条が宝であるとういう民意を国民投票で裏付ければいいだけではないか。憲法教徒ほど、そのことから逃げる。自信がないからだ。キャメロン首相が国民投票をやったことに対する批判もある。私は彼は名首相として名を残すと評価する。辞して、名を残すであろう。
 このように私たちに引きつけてイギリスで起きたことを大マスコミ
はどこも書かない。敢えて私ごときが記す次第である。

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