【シンガポール=吉村英輝】フィリピン外務省は14日、声明を発表し、モンゴルで15~16日に開かれるアジア欧州会議(ASEM)首脳会議で、中国を相手取り比側が「全面勝訴」した、南シナ海をめぐる仲裁裁判所の裁定を取り上げ、「関係当事者が裁定を尊重する必要性」を訴える方針を明らかにした。
フィリピンのヤサイ外相は12日、仲裁裁定について「内容を精査する」とし、中国に一定の配慮を示していた。だが、中国は13日、フィリピンに対し、「裁定を紙くずと認識して棚上げし、交渉のテーブルにつくことを希望する」(外務次官)と表明。これを受け、南シナ海問題への「ルールに基づく対応」をASEMの場で訴えることにした。
今回のASEMは先月末に発足したドゥテルテ新政権にとり「初の国際会議」で、ヤサイ氏が大統領の代理として出席する。
【ニューヨーク時事】米保守系シンクタンク、アメリカン・エンタープライズ政策研究所のマイケル・オースリン日本部長は13日、インタビューに応じ、南シナ海問題をめぐり仲裁裁判所が下した「中国敗訴」の判決に関し、中国が現在の行動を改める見込みは薄く、武力衝突が起きる可能性がむしろ高まったと警告した。
中国の主張をほぼ全面的に退けた判決について、オースリン氏は「法的に中国に大きなダメージを与えるものだった」と分析。「中国は今、国際社会から外れた所にいるように見える」と同国の孤立ぶりに言及し、判決が中国に「政治的にも打撃となった」との認識を示した。
ただ、中国は判決を無視する姿勢を公言。人工島での軍事施設増強や、東シナ海に続く南シナ海での「防空識別圏」設定など、対抗措置を取ることも懸念されている。オースリン氏は、判決が出たことで武力衝突の可能性が「以前よりも間違いなく高まった」と述べた。