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米空母派遣、狙いは   北朝鮮けん制だけにあらず

沖縄の基地反対に 動く在日朝鮮人を含む左翼活動家や 反日運動家の根本的な動きが、朝鮮有事の場合における問題点からよく理解できる

米空母派遣、狙いは   北朝鮮けん制だけにあらず        編集委員 高坂哲郎

2017/4/11 15:58
ニュースソース
日本経済新聞 電子版より転載
 米海軍が8日、南シナ海に展開していた原子力空母カール・ビンソンやその護衛にあたる巡洋艦などからなる空母打撃群(Carrier Strike Group、CSG)を急きょ予定を変えて朝鮮半島周辺に派遣すると発表した。核兵器弾道ミサイルで挑発を続ける北朝鮮への圧力を強めるのが目的と受け止められているが、今回の決定をめぐっては、誤解されていることや知られていない側面もある。米空母派遣の「真の狙い」を考えてみる
■現状の目的は「穴埋め」
 米空母打撃群は通常、西太平洋地域には最低1群は展開している。朝鮮半島台湾海峡などで不測の事態が起きることを防ぐためだ。東太平洋を管轄する米海軍第3艦隊に所属するカール・ビンソンが現在南シナ海にいるのは、横須賀を母港とする第7艦隊所属の原子力空母ロナルド・レーガンが毎年1月から4月にかけて点検・整備のため活動を停止するので、その「穴埋め」として展開しているのである。この時期、米空軍のステルス戦闘機F22が沖縄の嘉手納基地に飛来することがあるのも、西太平洋地域に力の空白が生まれるのを防ぐためだ。
 カール・ビンソン打撃群が8日ごろシンガポール沖合を出たとすると、原子力空母の航行速度から考えれば、早ければ今週末にも韓国沖合に到達するとみられる。空母艦載機の対地攻撃能力や、随伴する巡洋艦巡航ミサイル発射能力などから、同打撃群の振り向けは「朝鮮半島の緊迫度を一段と高める」とも解釈されている。たた既に述べたように、米海軍のCSGは常時1群、西太平洋地域に展開しているので、今回の米海軍の決定は「増派」を意味するわけではない。
■焦点は今後2~3カ月後
 今後の焦点の一つは、おそらく5月上旬に横須賀にいる空母ロナルド・レーガンが整備を終えて作戦行動をとれるようになった時、カール・ビンソン打撃群がなおも朝鮮半島周辺にとどまるかどうかだ。
 空母が2隻展開していれば、仮に1隻の空母の甲板で火災などが起きて使用不能になっても、爆撃を終えて戻ってきた艦載機はもう1隻の空母に降りることができる。つまり、米艦隊全体としては、より安全な状態で作戦を遂行できることになる。1996年の台湾海峡危機の際も、米海軍は空母を2隻体制にすることで「本気の軍事行動」をとれる構えを示し、台湾侵攻の隙をうかがっていた中国軍を抑止した。
 1991年の湾岸戦争の際、米軍はペルシャ湾や東地中海などに空母打撃群をピーク時で5群程度も展開し、イラクを爆撃した。これに対し現在、北朝鮮と対峙している米軍は、嘉手納や岩国など在日米軍基地、さらに在韓米空軍基地など地上にある航空基地を使える。どのような規模の作戦をするかにもよるが、仮に北朝鮮の核・ミサイル関連施設をピンポイントでつぶす限定作戦であれば、湾岸戦争のときのようにたくさんの空母打撃群を沖合にそろえる必要はなく、2~3群もあれば十分だろう。
 米空母打撃群の作戦行動期間は通常は半年強で、カール・ビンソンは今年初めに米西海岸を出発していることを考えると、今後2~3か月程度はとどまれそうだ。仮にそうなると、打撃群2つがいることになり、その時点で「増派」が確定する。朝鮮半島をめぐる「本当の緊張」はその時に始まる。
■中国に対してもにらみ
 「米軍が今、本当に注視しているのは、北朝鮮軍ではなく、中国軍の動向なのだろう」――。ある日本の安全保障関係筋が語る。本欄「中国軍、日本海に触手 朝鮮半島情勢が圧力に」(2月23日付)で既に述べたように、朝鮮半島有事になれば、中国軍は同国東北部から北朝鮮領内になだれ込み、日本海に面した羅津一帯を実効支配しようとする可能性がある。羅津の商業港を軍港化し、ここを潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)搭載の戦略原子力潜水艦の母港とすれば、米本土を射程に収めることができる。そうなると、日米同盟はくさびを打ち込まれた形となり、日本に対する米国の拡大核抑止(核の傘)の信頼性は一気に低下する。日本が中国になびかざるをえなくなれば、長い目で考えると、米軍がアジアににらみをきかせるうえで欠かせない在日米軍基地を利用できなくなるかもしれない。「中国軍の日本海進出」は、日米双方にとって悪夢のような事態なのだ。
 北朝鮮をめぐる緊迫は、単に朝鮮半島を揺るがすだけでなく、北東アジアの軍事バランスを長期的に大きく変える引き金にもなりかねないのである。

高坂哲郎(こうさか・てつろう) 国際部、政治部、証券部、ウィーン支局を経て2011年編集委員。05年、防衛省防衛研究所特別課程修了。12年より東北大学大学院非常勤講師を兼務。専門分野は安全保障、危機管理など。著書に「世界の軍事情勢と日本の危機」(日本経済新聞出版社)。