米空母派遣、狙いは 北朝鮮けん制だけにあらず 編集委員 高坂哲郎
- 2017/4/11 15:58
- ニュースソース
- 日本経済新聞 電子版より転載
■現状の目的は「穴埋め」
■焦点は今後2~3カ月後
米空母打撃群の作戦行動期間は通常は半年強で、カール・ビンソンは今年初めに米西海岸を出発していることを考えると、今後2~3か月程度はとどまれそうだ。仮にそうなると、打撃群2つがいることになり、その時点で「増派」が確定する。朝鮮半島をめぐる「本当の緊張」はその時に始まる。
■中国に対してもにらみ
「米軍が今、本当に注視しているのは、北朝鮮軍ではなく、中国軍の動向なのだろう」――。ある日本の安全保障関係筋が語る。本欄「中国軍、日本海に触手 朝鮮半島情勢が圧力に」(2月23日付)で既に述べたように、朝鮮半島有事になれば、中国軍は同国東北部から北朝鮮領内になだれ込み、日本海に面した羅津一帯を実効支配しようとする可能性がある。羅津の商業港を軍港化し、ここを潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)搭載の戦略原子力潜水艦の母港とすれば、米本土を射程に収めることができる。そうなると、日米同盟はくさびを打ち込まれた形となり、日本に対する米国の拡大核抑止(核の傘)の信頼性は一気に低下する。日本が中国になびかざるをえなくなれば、長い目で考えると、米軍がアジアににらみをきかせるうえで欠かせない在日米軍基地を利用できなくなるかもしれない。「中国軍の日本海進出」は、日米双方にとって悪夢のような事態なのだ。