パルデンの会

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孔子学院で進める中国共産党の対米「洗脳」大作戦

日本でも起きている事に気付いてほしい。

孔子学院で進める中国共産党の対米「洗脳」大作戦

7月27日(金)18時0分 

共産党が中国の宣伝機関として公認する孔子学院——文化教育の看板の陰で中国的価値観への洗脳が進む>

私の経歴から「台湾」が抹消された。

先日、私は米ジョージア州のサバナ州立大学のジャーナリズム・マスコミュニケーション学部から表彰を受け、基調講演に招待された。大学に提出した経歴には取材経験のある場所として台湾の名前も挙げたが、当日配布された資料からは削除されていた。

くだんの表彰は75年から実施されているが、ここ数年は予算が厳しく、市外から講演者を招待する費用にも窮していた。そこでスポンサーに名乗り出たのが、4年前に同大学に開設された孔子学院だ。

孔子学院は中国政府が国外の教育機関と提携して設立している公的機関で、中国語や中国文化の教育と宣伝を目的とする。04年から設立が始まり、現在世界各地に500カ所以上、アメリカでは100以上の大学内にある。

アメリカの多くの大学は資金不足に直面しており、気前のいい後援者に頼らざるを得ない。そして中国は、特に孔子学院のグローバルなネットワークを通じて、教育機関に喜んで資金を提供している。ただし、学術的な活動が中国共産党の意に反する問題に触れると、厄介なことになりかねない。

私は同大学に孔子学院が関与していることは知っていたが、偏見にとらわれたくなかったので招待を受け、講演の謝礼は非営利団体ジャーナリスト保護委員会に寄付することにした。

そして、ジャーナリズムを学ぶ学生たちに、4年前から追い掛けているテーマについて——香港の民主化運動、ウイグル人チベット人に対する中国政府の弾圧、習近平(シー・チンピン)国家主席によるメディアとインターネットの厳しい取り締まりについて語った。

私の講演を聞いて不愉快になった聴衆が、少なくとも1人いた。サバナ州立大学の孔子学院の共同代表を務める羅其娟(ルオ・チーチュアン)だ。

講演が終わると、羅は私に中国語でお説教を始めた。なぜ中国を批判するのか。学生には中国について、いい印象を与えるべきだ。習が中国のために大いに尽くしていることや、汚職撲滅運動の成果を知らないのか。

「あなたは現在の状況を知らない。さまざまなことが良くなっている」もちろん、実際はその反対だ。習は中国社会の徹底した弾圧を指揮している。人権派弁護士が投獄され、内陸部の山奥までハイテクの監視システムを張り巡らし、ネットの検閲を強化して、メディアを締め付け、香港で約束した普通選挙は有名無実化している。



ダライ・ラマの招待を阻止

講演の資料が印刷される前に、私の経歴から「台湾」を削除するように主張したのは羅だった。彼女は大学当局に、この単語を入れることは中国の主権を脅かすと話し、削除しなければイベントをボイコットすると迫った。

大学のプログラムを中国共産党の核心的利益と一致させようと羅が画策したのは、今回が初めてではない。大学関係者によると、孔子学院が地元の公立学校教師向けのプログラムを後援した際も、台湾と関係のある教員の出席を阻止しようとして失敗した。

ワシントンにある孔子学院広報部責任者、高青(カオ・チン)は、「台湾問題」は「政治的なテーマで語学や文化には関係ない」ため、孔子学院のカリキュラムに「含めるべきではない」と語る。「孔子学院の本来の指針は、中国語を教え、文化的意識を啓発することだ。孔子学院は現在の政策や政治を教える所ではない」

孔子学院が検閲の目を光らせているのは、サバナ州立大学だけではない。

09年にノースカロライナ州立大学がチベット仏教の最高指導者ダライ・ラマ14世を招待しようとしたが、学内の孔子学院から「中国と培ってきた強力な関係」を害しかねないと警告されて中止した。14年にポルトガルで開かれた中国研究の学会では、ある孔子学院の責任者が台湾に関する資料に抗議。資料は回収され、学会のプログラムからも台湾関連のページが破り取られた。

ニューヨーク州立大学オールバニ校では、孔子学院の中国人の共同代表が、台湾に言及するポスターを次々に剥がした。その日、孔子学院を管轄する中国・教育省の国家漢語国際推広領導小組弁公室(漢弁)の高官が、大学を訪問することになっていた。

「露骨な規制はないが、特定の話題はタブーだという明確な共通認識がある」と、17年に全米学者協会が出版した孔子学院に関する報告書を執筆したラチェル・ピーターソンは言う。「孔子学院の中では(中国にとって)いいこと以外は存在しない」

一部では対抗する動きもある。カナダのマクマスター大学は13年に孔子学院を閉鎖した。中国で非合法組織とされる気功集団の法輪功に参加していた教員が、孔子学院から圧力を受けたとして、退職後に人権侵害を申し立てたことを受けての判断だった。

シカゴ大学は漢弁の役人と対立し、14年に孔子学院を閉鎖した。ペンシルベニア州立大学も同年に閉鎖。テキサスA&M大学は今年4月に2つのキャンパスで閉鎖を発表している。



予算の厳しい大学が狙われる

ただし、簡単にはいかない場合も少なくない。資金力があり、中国関連のプログラムが確立している大学は、孔子学院に対して強い立場を取れる。孔子学院が提供する数十万ドル相当のプログラムを当てにする必要がないからだ。一方で知名度が低く、予算や資源が乏しい大学は、漢弁の資金提供がなければ、学生や地元住民が中国語を学ぶ機会さえなくなるかもしれない。

サバナ州立大学も、資金が潤沢なアジア研究の学部を持っていない。私が宿泊したホテルのフロントで働く青年は、今夏にダンスの巡業で中国を訪れるという。孔子学院の後援がなければ、ダンサーたちは生涯、中国を自分の目で見ることはないかもしれない。

アメリカの大学の孔子学院は、アメリカ人と中国人が共同代表を務める。「アメリカ人の代表は学問の自由を支持し、孔子学院を建設的にマネジメントしようとする」と、ピーターソンは言う。しかし「現実にはかなり難しい。ほぼ不可能な場合もある」。

政治家も警戒を強めている。今年3月、米上下両院に外国影響力透明化法案が提出された。成立すれば孔子学院は外国政府の出先機関として登録を義務付けられ、司法省に資金の提供先や活動内容を報告しなければならない。外国から5万ドル以上の寄付を受けた大学も開示が義務付けられる。

予算が逼迫した大学が最初に削るのは、語学教育だ。米国現代言語協会によると、全米の大学で中国語を履修した学生の数は、13年の約6万1000人から16年には5万3000強と13.1%減っている。

大学が学生に最大限の機会を与えたいと思うのは、当然のことだ。教育機関の予算が乏しく、中国政府がその穴を喜んで埋めようとする限り、孔子学院は全米の大学で影響を振るい続けるだろう。

<本誌2018年7月17日号掲載>

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[2018.7.17号掲載]
ベサニー・アレン・イブラヒミアン(フォーリン・ポリシー誌記者