パルデンの会

チベット独立と支那共産党に物言う人々の声です 転載はご自由に  HPは http://palden.org

パレスチナ人と ユダヤ人の 流血の連鎖生む武力行為  しかしチベット人と中国共産党では 非暴力貫くダライ・ラマ法王がおられます。

 

宗教と民族問題の難しさ

拓殖大学国際日本文化研究所客員教授 ペマ・ギャルポ





流血の連鎖生む武力行為
非暴力貫くダライ・ラマ法王

 

 

 このたびのパレスチナイスラム武装組織「ハマス」によるイスラエル安息日を狙った襲撃は世界に電撃を走らせた。彼らの行為は極めて残酷であり、特に無差別に非武装の民間人を惨殺し、人質を取ったことに関しては、世界中が批判を浴びせている。私もその一人である。

 だが一方において、彼らがそれまでに至った歴史的背景や「2021年のイスラエルによるアルアクサ・モスク襲撃に対する報復である」というハマス軍事部門のムハンマド・デイフ司令官の主張も、同じく宗教弾圧を受けている身として理解できるところはある。もちろん、だからといって彼らの行動を支持するつもりはない。この時、私はマハトマ・ガンディーの言葉とダライ・ラマ法王の言葉を思い出した。

ペンで現状訴え続ける

 ガンディーは「目には目という報復行為では、お互いが目を失うことになる。そして最終的には、世界中の人々が失明することになる」、ダライ・ラマ法王は、若い時の私に「中国に対して、血を流させる行為は、血を流すことの連鎖を起こすことになるから、武力行為は何一つとして利を生まない」とおっしゃった。

ハマス戦闘員に襲撃されたイスラエル南部のキブツ・ベエリで、捜索活動を続けるイスラエル軍兵士=10月22日(時事)

ハマス戦闘員に襲撃されたイスラエル南部のキブツ・ベエリで、捜索活動を続けるイスラエル軍兵士=10月22日(時事)

 

 私も、若い時は、チェ・ゲバラなどの革命家に傾倒し、ややもすれば戦闘的な青年であった。チベットとネパールに潜伏し、戦いを続けていた当時のチベットゲリラは、1972年に米中関係が改善に向かったことで中国軍とネパール政府軍の挟み撃ちに遭うことになり、これに対して最後の一人まで戦うという決意をした。

その時、法王は、ゲリラに音声テープを送り、自国の地においては正当防衛という立場から多少の道理があるにしても、他の国(ネパール)や住人を巻き込むような戦争には正当性がなく、直ちにネパール政府に降伏するよう強く求めた。

これを聞いたゲリラの中には、法王のお言葉に逆らうこともできず、仲間との徹底抗戦の誓いを破ることもできず、自身に銃口を向けて自害した人もいた。

 かつて私がインドの難民学校に居た時、同学年であるが私よりも年上のライバルが居た。彼は私が日本に来た年、チベットゲリラ部隊に入隊した。後に彼が戦死したことを聞いた時、正直なところ私は、彼に対する敗北と尊敬が入り混じった複雑な思いを抱いた。それだけ当時の私には、武闘派的な精神があったのである。以来、彼の存在は私の脳裏に残り、「私の代わりに彼が日本に来ていれば何を成し遂げていただろうか」という気持ちが私の一つの原動力となっている。

後に私は大学を卒業し、法王に直接お仕えする機会に恵まれて、徐々に考えにも変化が生じた。結果、私は「ペンで戦い、チベットの現状を訴え続けることが彼に負けない方法だ」と考えるようになり、今日に至っている。

 

現時点までに、チベットでは、中国によって直接・間接で120万以上の尊い命が犠牲になっているが、ダライ・ラマ法王の一貫した非暴力と対話の思想がなければ、この何倍もの人たちの命が犠牲になっただろう。

79年から88年頃までは、鄧小平路線に基づいた緩やかなチベット政策が展開されたが、その後、中国はチベット文化や宗教に対する弾圧を再び強化し、95年にはダライ・ラマ法王が任命したパンチェン・ラマ11世である6歳のチョーキ・ニマを拉致した。いまだにニマ少年は行方不明となっている。

また、2016年7月、中国は東チベットのラルンガル寺院をブルドーザーで破壊し、7000人の僧侶たちを追放した。今、チベットの人々はこの悪政に対して、自らに油を掛けて焼身抗議を行い、決して中国人などを巻き添えにして殺すようなことはしていない。

法王こそ問題解決の鍵

 しかし、ダライ・ラマ法王の徹底した非暴力・平和主義を中国政府は逆に「法衣を纏った狼である」とか「分離主義者である」と言っている。

07年には、輪廻転生する活仏(化身ラマ)の制度に対し、中国政府は、共産党が認定に介入するという法令を出した。

その目論見は、彼が最も恐れているダライ・ラマ法王の次の転生者をパンチェン・ラマ同様に自らのコントロール下に置くという意図である。

 現在、法王は極めて健康であり、ご自分は113歳まで生きるとおっしゃっている。私は、法王御自らご自分の転生者を明 確にするだろうと信じている。

中国側が万が一にも、都合の良い人物を押し付けようとしたら、チベット人のみならず、チベット仏教徒であるモンゴルやヒマラヤ地域、そして世界中の信徒たちがそれを認めないだろう。それだけではなく、中国も、イスラエルパレスチナのような安らぎのない悲劇を迎えることになるだろう。

中国政府は、ダライ・ラマ法王は問題ではなく、問題を解決するための得難い鍵であることを知るべきだ。