パルデンの会

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ラースト・エンペラー 習近平


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宮崎正弘の国際ニュース・早読み」
平成25(2013)年3月30日(土曜日)
通巻第3911
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北風抄コラムより
「習・李体制」は多角的運営に
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宮崎正弘

三月の全国人民代表者会議は習近平李克強政権(習李体制)
の正式スタートになったが、行政改革、腐敗防止、ソフト外交の演出など多くの話題を呼んだ。
しかし習近平には独自の派閥がないことが露呈し、
これからの政局運営は団派(共産主義青年団)が主導し、上海派がときに妨害という状況が予測され、新皇帝=習近平のアキレス腱が明確に露呈した。

わけても団派の大躍進は国家副主席に李源潮
李克強首相のしたの副首相三人(馬凱、王洋、劉延東)が団派、昨秋に決まった軍のトップ(党中央軍事委員会にも習近平に近い軍人は二人だけ、多数派は団派である。権力中枢の基軸が団派有利にずれているのだ。
ところが内外マスコミは全人代に選ばれたジャッキー・チェン
ヤオミン、莫言らの動向ばかりを追いかけ、なんだか芸能ショーみたいな報道をしていた。李鵬の娘の李小琳、トウ小平の娘、トウ楠、朱容基の娘の朱燕来らが出席して積極的な発言を繰り出した。

会期中、北京の空は真っ黒、PM2・5以上の塵芥、放射能
煤煙。そこで世界のマスコミが注目したのはプロバスケット選手ヤオミンが北京の環境汚染、とくにPM2・5について聞かれ、「かろうじて呼吸している」と答えた台詞が強烈だった。

しかし今回の両会において中国政治に従前と異なる特色が幾つも露
呈したことは注目に値する。
第一に財閥、特権階級の汚職にメスを入れるポーズ、
汚職キャンペーンの効果が別の方面からでた、つまり海外へ逃げた高官は一万八千名に及んだこと。しかし太子党を中軸とする特権階級は維持されるのである。
第二に「海洋強国」「戦争の準備をせよ」などと習近平が発言し、
中国の本質が軍国主義に急傾斜したこと。外交上の硬軟両道使い分けを継続するものの、対米姿勢に敵対的な要素が露呈していることである。しかも会期中にオバマ米大統領ハッカー攻撃に業を煮やし中国を名指しで批判した。

第三に毛沢東思想の復活とトウ小平の改革開放路線の継続という二
律背反が鮮明になって、その不整合がもたらすであろう諸矛盾の爆発が射程にはいってきたこと。
第四に著名人やら芸人を動員しての中国政治協商会議でいかように
親民路線を演出しようともネット空間における共産党ならびに高官への批判はますます高まり、習近平共産党王朝のラストエンペラーとなりそうだ。

次の関心事はこれからの外交である。
とくに中国のソフトパワー外交の進出方法である。「孔子学院」
はカナダから一部撤退、米国でスパイ機関と見られており、先進国で頓挫している。米国ではレノボ華為技術、中国通訊(ZTE)の三社の製品を米国政府機関及び公務員は購入しないよう通達がでた。このため中国はソフトパワー外交を歌手芸術家総動員路線に切り替え、なんとファーストレディの膨麗媛が習近平の外遊に同行するばかりか、単独でも積極的に海外公演に打って出ることになった。前代未聞の演出である。中国が良い方向へ変わる可能性は少ないが多角的動きがでてきたのである。

(この文章は北国新聞、3月25日付け「北風抄」の再録です)

(註 王洋の「王」はさんずい。朱容基の「容」は金編。
トウは登におおざと。膨麗媛の「膨」はさんずいトル)
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