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ペマ・ギャルポ 「2012年の自民党案、つまり憲法の前文や第9条をも含む抜本的な改革からは後退しているようにも見える。解釈に委ねるような不明確な要素を残した憲法改正よりも、今の時代に合った未来につながるような改正をすべきであろう。」

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憲法改正の好機を逃すな

  ペマ・ギャルポ  2022/5/22(日)  Viewpoint政治 

拓殖大学国際日本文化研究所教授    ペマ・ギャルポ

 

前文や9条含め抜本的に
禍根残すその場しのぎの改正

 

ペマ・ギャルポ

拓殖大学国際日本文化研究所教授
ペマ・ギャルポ

 毎日、新聞を開くと大きな見出しはロシアによるウクライナ侵略の記事であり、テレビのニュースも同様である。従って本来であれば私も非道かつ残酷極まるロシアによる国連憲章をも無視した大国の暴力について書くべきであろう。

 だが、この時期ここまで来てはこの戦争は誰によってどのような形で終止符が打たれるか、その行方について全く予測できない。恐らく当人のプーチン・ロシア大統領、あるいはゼレンスキー・ウクライナ大統領でさえもこの結末に対して予測が付かないほど混迷極まっているということである。

危険な環境を国民自覚

 その中で三つのことが明確になったように私は見ている。一つ目は共産主義独裁者毛沢東金日成そして元共産党プーチン大統領など独裁者は、自らが抱いた祖国統一という幻想に亡霊のように支配され、それを具現化するために一方的に他の国の主権を奪い、人々を大虐殺する正当性を主張して暴挙を繰り返している。

 二つ目は本来であれば戦争を事前に阻止し平和構築に尽くすべき国連が、今の時代においては機能不全に陥っていることである。その理由としてかつての国連事務総長のダグ・ハマーショルドウ・タントあるいはブトロス・ガリのような人格者が国連事務総長にいないこと。特に国連改革を成し遂げようとしたガリ事務総長を1期で中国とアメリカが追い出して以来、大国の意のままに動かせる人物しか国連事務総長に据えなかったことが原因の一つであると思う。

 三つ目に世界平和は「平和を愛する諸国民の公正と信義を信頼してわれらの安全と生存を保持しようと決意」するだけでは国が守れないことが明確になったことだ。従って今回は前述のような憲法を保持する日本国民が、ある程度自国の置かれている環境に目覚めたことについて愚見を述べたい。

 5月3日の憲法の日に今年もさまざまな憲法関連の集会などが行われた。私も「美しい日本の憲法をつくる国民の会」主催の第24回公開憲法フォーラムに参加した。コロナウイルスという世界大戦並みの危機に直面したことと、ロシアによるウクライナ侵攻を目の当りにして、日本国民も以前に増して日本を取り巻く危険な環境に対し、かなり覚醒してきていることを実感した。

 それを裏付けるものとして、各新聞社やNHKなどの世論調査でも、憲法改正の支持が反対を上回ってきていることである。「美しい日本の憲法をつくる国民の会」の賛同者も目標の1000万人を超え、1005万人の賛同者が意思表示したと会場の横断幕に記入されていたこともそれを物語っているように思った。

 昨年同様、今年も自民党公明党、維新の会、国民民主党などの政党の代表者が登壇し、それぞれの政党の立場で熱弁を振るった。加憲を主張する公明党の出席にはある種の違和感を覚えたことは事実であるが、この期に及んでいまだに真剣に憲法改正に向き合おうとしない共産党社民党立憲民主党のような政党が存在することには落胆した。

 主催者の櫻井よしこ氏はじめ3人の専門家による基調講演や、提言には深く感銘を受けた一方、政治家たちの演説を聞いて私は新たな不安を抱いた。それはそれぞれの主張には共鳴する部分もあり、各論には賛同するものの、憲法改正の抜本的な改正の全体像が見えず、むしろせっかく国民の過半数憲法改正を支持する好機に、結果的にパッチワーク的なものが出来上がるのではないかという新たな不安を抱いたからである。

後退した自民党改憲

 例えば自民党憲法改正推進本部による4項目の①憲法9条への自衛隊の明記②緊急事態条項③参院合区解消④教育の充実化(無償化)―などはどれも大切であり、急務であることは間違いないが、2012年の自民党案、つまり憲法の前文や第9条をも含む抜本的な改革からは後退しているようにも見える。

 日本はその場しのぎのような方法で、例えば敵基地攻撃能力を反撃能力などという言葉に変えて、結果的には解釈に委ねるような不明確な要素を残した憲法改正よりも、今の時代に合った未来につながるような改正をすべきであろう。この憲法改正機運を生かしても結果的には不完全な憲法改正になるようなことは絶対にあってはならない。今日のウクライナが明日の台湾、あるいは尖閣諸島に及んでくることを踏まえて早急に憲法改正に取り組んでほしい。