伊藤忠商事は、
資本提携先の中国国有企業の
中国中信集団(CITIC)グループや
清華大学系
投資法人と組み、2000億円規模の
投資ファンドを設立する。投資対象は主に日本のスタートアップ企業で、中国市場への進出を促す。米国と中国の貿易戦争が続くなか、中国勢には先端技術を呼び込む狙いがあるとみられる。
イブニングスクープ
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伊藤忠は5日、CITICグループ子会社の
投資法人、
信金インベストメント・ホールディング(香港)と、中国外のスタートアップ企業への投資に向けたファンドの設立で合意した。まずは日本企業を中心に投資する。
信金にはスタートアップ投資で知られる
清華大学系の
投資法人TUSホールディングスが10%出資しており、投資の目利きを担う。
伊藤忠と
信金は他のCITICグループ企業にも出資を募り、年内に約1200億円の資金を集め、将来的に2000億円のファンドとする。投資は8月をめどに始める。
伊藤忠にとっては6000億円を投じたCITICとの提携後、最大の協業案件になる。
投資を受けるスタートアップは中国への進出が条件となる。中国では
外資規制の撤廃が進むが米中貿易戦争により、
外資系企業の参入が滞りかねなくなっている。
伊藤忠が投資先となる日本企業を発掘し、5000社以上の起業支援をしてきたTUSが投資先の技術を見極め、投資に値する企業に中国向けの事業構築の支援もする。CITICは現地の法規制の面での助言を担う。1件あたりの投資額は数億~数十億円になる見込みだ。
進出企業には約14億人の人口を抱え、データ活用などが進む中国は事業拡大の可能性を秘めた魅力的な市場だ。
伊藤忠はスタートアップと連携し、既存事業を刷新し、新たな事業参入を狙う。
伊藤忠は2015年にタイ財閥の
チャロン・ポカパンと折半出資でCITIC株の20%を取得し同社と
資本提携した。ただ相乗効果は限定的だった。
伊藤忠は「反腐敗運動により、
中国経済全体が萎縮していた」という。18年には株価の低迷からCITIC株を減損処理し、約1400億円の損失を計上した。
ただ、
日中関係の改善などから19年に入り、北京の病院運営会社への共同出資やデータセンター投資向けのファンド設立合意など協業案件が相次ぎ生まれている。CITICは金融事業で8割の収益を稼ぐが、小売りや
ビッグデータ活用など新たな産業分野の拡大を目指している。