国の許可を受けずに臓器移植に使われる臓器の提供のあっせんをしたとして、NPOの62歳の理事が臓器移植法違反の疑いで警視庁に逮捕されました。海外での臓器移植を無許可であっせんした疑いで摘発されるのは全国で初めてです。理事は容疑の一部を否認しているということです。
逮捕されたのは、横浜市に事務所があるNPO法人「難病患者支援の会」の理事、菊池仁達容疑者(62)です。
警視庁によりますと、菊池理事は、NPOが国の許可を受けていないのに、海外での臓器移植を希望する東京都内の男性の患者に去年2月、ベラルーシで肝臓の移植手術を受けさせるなどして、臓器の提供のあっせんをしたとして、臓器移植法違反の疑いが持たれています。
理事は、患者の親族に「肝臓の状態がぎりぎりの数値だから早くしたほうがよい」などと言って、早期の渡航を促し、臓器移植の費用として、およそ3300万円をNPOの口座に振り込ませていたということです。
調べに対し理事は「移植を希望する男性に臓器のあっせんを行った事実は認めるが、海外で行われる手術には許可がいらないと思っていた」と容疑の一部を否認しているということです。
理事は、NPOの実質的な代表として海外に渡航し、臓器移植を希望する患者を対象にベラルーシやウズベキスタン、それにキルギスなどでの臓器移植の相談に応じていたということです。
関係者によりますと、海外で臓器移植の手術を受けた患者のなかには容体が急速に悪化したケースも報告されているということです。
警視庁は、法人としてのNPOも臓器移植法違反の疑いで書類送検し、詳しいいきさつを調べています。
海外での臓器移植を無許可であっせんした疑いで摘発されるのは全国で初めてです。
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国内でドナーが見つからないなか、海外での移植を目指すことにした男性は、おととし1月に今回逮捕された菊池理事に出会いました。その後、NPO法人の関係者から「急きょ、空きができた。このチャンスを逃すといつになるかわからない。4日後までに費用を振り込んで欲しい」などと強く促されたということです。
男性はこの機会を逃したくないと考え、指定された口座におよそ2200万円を振り込みました。この際、男性が菊池理事やその関係者に「違法なことはないか」と尋ねると「すべて合法です」と言われたということです。
そして、おととし12月「手術はウズベキスタンで行われる」と伝えられ、男性は中央アジアのウズベキスタンへと向かったということです。到着すると、今度は隣国のキルギスへと向かうよう指示を受け、キルギスに到着後、移植手術を行うという病院を訪れました。そこは5階建ての病院で、男性はスタッフから「ICUを作っている」と説明され、機材が次々と病院に運び込まれる様子を見て、不安を感じたと振り返ります。
またNPOからの事前の説明では「国立病院に勤め、信頼できるトルコ人の医者が執刀する」と言われたということですが、男性を担当する医者はエジプト人だと聞かされたといいます。
男性はこの病院には、同じNPOの仲介で移植手術を受けに来た別の日本人の女性がいたと証言し「女性は手術を受けた直後に容体が悪化したため、そのまま移植手術を受けることに不安を感じ、帰国しました」と話しました。
支払った金額のうち半分は返金されたものの、残りは戻ってきていないといい、男性は「移植を希望する病気の人の弱みにつけ込んで許せず、今さら遅いのかもしれないが反省して欲しい」と話していました。